その際に江口ともう1人が頭を切って負傷。習志野戦での不調は、事件による精神的ショックの影響と推測された。

 翌23日、学校で開かれた記者会見の席上、監督は「再三注意したのに、言うことを聞かないので、やむを得なかった。金属バットで殴ってケガをさせたことは、やり過ぎたと思っている。2人にはたまたまグリップエンドの部分が当たり、出血してしまった」と事情を説明し、謝罪した。

 東海大甲府戦の勝利後、ハイテンションになった選手たちは、毎晩のように夜更かししており、監督はこれを「油断」と危惧したようだが、だからといって、バットで殴打するのは、確かにやり過ぎだ。

 8月25日、監督と野球部長は解任され、事件とは直接関係のない新チームも対外試合を自粛することになったが、高野連の応急措置で、一度は絶望視された秋の県大会出場が認められたのが、せめてもの救いだった。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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