日本大学の本部=東京都千代田区

 日本大学アメフト部員による違法薬物事件。8月5日に乾燥大麻と覚醒剤成分を含む錠剤を所持していた疑いで部員一人が逮捕されたが、それまでの経緯には疑問点も多い。大学側が調査して、植物片などを確認してから警視庁に連絡するまでに10日以上かかっており、林真理子理事長は8月2日の時点で、違法薬物については「確認できておりません」と答えている。8日に開かれる大学側の会見ですべてが明らかになるのだろうか。

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警察への報告が遅れたのは検査の時間稼ぎ?

 アメフト部の寮内で大麻を吸っている部員がいる--。

 日大にそんな情報が寄せられたのは7月上旬だった。情報提供を受けた大学側は、アメフト部の寮を調べ、同月6日に植物片などを確認した。

 しかし、日大から警視庁に連絡があったのは18日だった。

 この点について、大学ジャーナリストの石渡嶺司さんは、

「10日以上経って警察に報告したのも何か意味があるのではと考える。過去にも大麻や覚醒剤がらみの事件は起きている。もしかしたら、尿検査で陽性反応が出なくなるまで待ったのではとも、疑問点が上がっている」

 と大学の対応に不信感が募ると指摘する。

 さらに、一連の騒動を受け、林理事長は8月2日、報道陣の取材に、

「違法な薬物が見つかったということは一切ございません」

 と説明した。

就任1年の記者会見で話す日本大学の林真理子理事長=2023年7月11日

 この点についても石渡さんは、

「7月上旬に日大は調査をしており、林理事長が『違法薬物は見つかっていない』と言い切ってしまったのは、危機管理としてかなりのマイナスです。せっかく改革を進めてきたのに、大きなつまずきとなってしまいました。仮に林理事長に真相が知られていなかったとしても、それはそれで問題。結果的に日大の隠蔽体質が始まったと誤解されてしまう」

 と語る。

 日大アメフト部をめぐっては2018年、関西学院大学との試合で、日大の選手が、無防備だった関学大の選手に故意に背後からタックルをして負傷させた「悪質タックル問題」が起きた。指導方針や組織態勢に問題があったと指摘され、当時の監督やコーチは退任。大学内部の組織構造にまで話は広がった。

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日大のブランドはすでに落ち始めている