一方で、労働基準法の改正で時間外労働の上限が定められ、来年4月から建設業でも適用される。これに対し万博協会は、パビリオンの工事の遅れを懸念し、万博関連の工事には適用しないよう政府に要請していたという。

 とはいえ、働き方改革を進める政府としてはそんな話を認めるわけにはいかない。そうすると、協会側はさらに、労働基準法の例外規定に当てはめることができないか探る動きもあったという。

 労働基準法には、

災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合には、使用者は、法定の労働時間を超えて、または法定の休日に労働させることができる>

 とあるためだ。

 しかし、加藤勝信厚生労働相はこの点について会見で、

「単なる業務の繁忙という理由では認められない」

 との認識を示し、受け入れなかった。

 大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。地元の大阪府、大阪市などが出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」のテーマは「健康と医療」。時間外労働の上限規制から万博関連工事を除外してというのは、テーマに逆行しかねない。

 タイプAを予定している、ある国の担当者は、

「ドバイ万博が1年遅れたので、大阪・関西万博にとりかかる準備期間が短くなり、余計に遅れている。国際情勢も混沌(こんとん)としているし、ドバイ同様に延期してくれると助かります。他の海外の参加国もよく似た考えです」

 と本音を漏らす。

維新議員は「何がなんでも成功を」

 大阪府の幹部の一人もこう話す。

「大阪府や大阪市の万博の担当者は、すでに時間外労働ばかりですよ。まだエアコンがあるからいいですが、現場はかなり過酷です。吉村知事は開催時期の変更はないと言っていますが、ドバイ万博も延期したのですから大阪も延ばせないものかと。そんな雰囲気ですよ」

 万博とそれに続く2029年開業予定のカジノを含む統合型リゾート(IR)は維新の看板政策だ。維新の国会議員からは、

「万博の遅れは絶対許されない。今は支持が伸びて、次の衆院選で野党第1党となる勢いがある。何がなんでも成功させて、勢いを増す展開にしたい。延期すれば政治的立場が危うくなる」

 との声も上がる。

 吉村知事は「開催の延期、遅れはあり得ない」と何度も強調するが、厳しい現実が刻一刻と突き付けられているのも確か。知恵と工夫で乗り切れるだろうか。

(AERA dot.編集部 今西憲之)

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