7月のある日、筆者は万博の会場となる夢洲を訪れた。
見渡す範囲は、広大な埋め立て地ばかりで、そこを基礎工事をするためのクレーンやパワーショベル、トラックなどが行き交っていた。
夢洲には海上輸送のコンテナターミナルが2009年から稼働しているため、当然、そちらに向かう車両もあるのだろう。
万博で、日本政府関連の施設やパビリオン建設の仕事を請け負っているゼネコンの幹部に話を聴くと、
「タイプAを表明している56カ国・地域のうち開催に間に合うのは20くらいではないか。時間と人手が足りず、資材も十分ではない。夢洲へのアクセスとなるトンネルと橋は渋滞も激しい。猛暑で無理な労働もさせられない。そうなると、残された時間でオリジナルのパビリオンを仕上げるのは難しい。プレハブである程度を建て、外観や内装で完成させるという吉村知事の考えはやむを得ないところはある」
と一定の理解は示しつつも、
「ただ、海外のパビリオンは、本来の華やかさや独自性などは失われてしまう」
と話した。さらに言えば、万博の来場者はそれを一番楽しみにして来るといってもいい。
ちなみに、コロナの影響で1年延期となり2021年に開かれたドバイ万博では、「日本館」は行列ができる人気だった。日本の折り紙を表現したデザインや、冷却効果をもたらす水盤の外観などにオリジナル性が出ていた(ドバイ万博の「日本館」)。
万博会場のメインゲートとみられる交差点付近に行くと、コンクリートの橋脚が姿を現し始めた。「万博の会場」と認識できる、唯一の建造物だ。
万博の工事に求人かけてもこない
工事現場の作業員に聞くと、工程表を手にこう話した。
「今やっているのは、本当なら7月初めに終わっていないとだめな工事なんです。どこも1カ月弱は遅れている感じです。理由は人手不足とこの暑さ。夢洲には日よけもなく、コンビニエンスストアが1軒あるだけ。長時間、ここで働けというのは無理ですよ。こんな職場に求人かけてもなかなかきません。実際、作業中に気分が悪くなって早退したり、車の中でエアコンをかけて横になって休んだりしている作業員は毎日のように見ます」