「燃えあがる女性記者たち」 (c) Black Ticket Films 提供きろくびと

 昨年公開された「RRR」を筆頭に、今インド映画が熱い。世界でインド映画の代名詞となっている「ボリウッド」だけでなく、近年は「トリウッド」も注目されている。アジア映画研究者が語るインド映画の魅力とは。AERA 2023年8月7日号より紹介する。

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 インド映画「RRR」(2021)の勢いが止まらない。昨年10月21日に公開されてはや9カ月、すでに配信やレンタルも始まっているのに、今も各地の劇場で上映中だ。7月28日からは日本語吹き替え版上映も始まり、「RRR」の文字が躍るスクリーンが再び増加する予定だ。

 1920年の英領インドを舞台に、二人の青年の友情と反英闘争を描く「RRR」は、明快な物語と外連味たっぷりの見せ場の連続、そしてインド映画特有の歌とダンスで、観客の心を掴んだ。中でも、米アカデミー賞主題歌賞を受賞した曲「ナートゥ・ナートゥ」のダンスシーンは圧巻で、真似る人が続出した。

「トリウッド」も注目

 インドではいろんな言語で映画が作られている、というのは、今や日本でも常識だが、「RRR」は南インドのテルグ語映画。一方、本年1月公開のインド版「ニュー・シネマ・パラダイス」こと「エンドロールのつづき」(2021)は、北インドのグジャラート語映画。また5月公開の「ブラフマーストラ」(2022)は、ヒンドゥー教の思想世界をファンタジー冒険物語に仕立てた作品で、北インドで広く話されるヒンディー語映画である。

 ムンバイを中心に作られるヒンディー語映画は、「ボリウッド映画」と呼ばれて世界でインド映画の代名詞ともなっているが、実はここ数年、南インド映画に押され気味だ。「トリウッド」と呼ばれるテルグ語映画は、S.S.ラージャマウリ監督の「バーフバリ」2部作や「RRR」を筆頭に次々とヒットを放ち、日本では現在、「RRR」の主役の一人ラーム・チャラン主演作「ランガスタラム」(2018)が公開中だ。その南に位置するタミル語映画界は「コリウッド」と呼ばれ、「ムトゥ 踊るマハラジャ」(1995)のラジニカーントがいまだ健在で、彼に続く大スターたちが社会派作品も含むヒットを連発している。

 そして昨年インドの人々を驚かせたのが、「サンダルウッド」と呼ばれるカンナダ語映画界である。現在日本で公開中の「K.G.F:CHAPTER2」(2022)が、「RRR」を抑えて国内興収では第1位になったのだ。全世界興収では「RRR」が勝ったが、2018年にカンナダ語映画としては未曽有の興収20億ルピーを叩き出して人々を驚かせた第1弾「K.G.F:CHAPTER1」に続き、サンダルウッドの大化けを見せつけた。

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