「概して、アルコール飲料が売り上げに占めるウェートの高い業態ほど、苦戦を強いられています。コロナ禍の時短営業で習慣化したこともあり、飲み会に参加しても早めに帰宅する人が増えているのです。こうして深夜まで店をハシゴする人が減少しているうえ、急増しているインバウンド(訪日外国人旅行者)も居酒屋・パブにはなかなか足を運びません」(中井さん)
客足が戻らないうえ、物価高による利益の圧迫に人手不足と、まさに居酒屋・パブは三重苦に陥っているわけだ。大量仕入れによるコスト削減などが可能な大手チェーンはともかく、中小・零細事業者は厳しい状況にある。中井さんもさらに飲食業の倒産や廃業は増加すると見ているが、次のようにも指摘する。
「もともと飲食業界は、参入障壁が低いだけあって“多産多死”が当たり前の世界。新規出店者で3年後に残るのは、わずか1割程度にすぎないとも言われています。こうしたことから、足元で淘汰が進む中でも、新たに店をオープンするケースも増えてきています。多くの飲食店にとって大きなピンチかもしれませんが、逆に新規出店のチャンスだと考える経営者や創業者も着実に存在しているのです」
また、物価高への耐性が低い零細事業者も、人手不足に関しては打つ手もある。「ファミリービジネスなら家族総出で頑張れば、ある程度はしのぐことが可能」(中井さん)。この難局を乗り切る飲食店に幸あれ!
(経済ジャーナリスト・大西洋平)
※AERA 2023年8月7日号より抜粋