AERA 2023年8月7日号より
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 経済活動がコロナ禍から立ち直りつつあるが、飲食店の倒産が増えている。東京商工リサーチによれば、今年上半期(1~6月)における全国の企業倒産件数(負債額1千万円以上)は、2020年の同期以来3年ぶりに4千件を突破した。10分類中で最も倒産が多かったのは「サービス業他」の1351件(前年同期比36%)。中でも深刻なのは飲食業だ。倒産件数は424件で、前年同期比78.9%もの大幅増となった。ただ、業態によっては業績好調の飲食店もある。何が明暗を分けたのか。AERA 2023年8月7日号の記事を紹介する。

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 業態別に見てみると、最多は食堂・レストランの110件で、93件の専門料理店、90件の酒場・ビアホール(居酒屋)がそれに続いた(東京商工リサーチ調べ)。倒産の原因については、「販売不振」が最多の350件で、次いで「既往のシワ寄せ」(25件)、「他社倒産の余波」(21件)が目立った。

 1年前と比べて倒産が急増中の業態もある。前年同期比210%増を記録した宅配飲食サービス業で、持ち帰り飲食サービス業も同137.5%増となった。これらはコロナ禍で需要が急拡大した業態であり、一転して今は逆風にさらされている。テレワークから出社勤務に戻す企業も増えており、宅配や持ち帰りの特需はすでに過ぎ去ったということなのかもしれない。

 もっとも、こうして中食の人気が一服していることは、いわゆる外食にジャンル分けされる飲食業にとっては朗報ではないのか? 実際、夜の繁華街も活気を取り戻し、満員御礼となっている飲食店も多い。

 飲食業界の動向に詳しい流通アナリストの中井彰人さんはこう答える。

「確かに、足元では全体的にも売り上げの回復傾向がうかがえます。しかしながら、コロナ禍以前の状況と比べてみると、業態によって業績回復のピッチにかなりの濃淡が見られるのが現実です」

 中井さんの発言を裏付けるのは、日本フードサービス協会による「外食産業市場動向調査(5月度結果)」だ。これは、今年5月の売り上げをコロナ禍以前(2019年5月)と比較したもの。業績が好調なのはファストフード全般、中華・焼き肉のファミリーレストランで、コロナ禍以前を超える水準まで売り上げが伸びている。対照的に、パブ/居酒屋はコロナ禍以前の6~7割台までしか売り上げが戻っていない。

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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