鉄道写真図鑑2015 より
鉄道写真図鑑2015 より
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本日、新聞広告も出ました!(朝日新聞3月31日付)
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鉄道写真家・櫻井寛さん&中井精也さんがセレクトした、「アサヒカメラ鉄道写真コンテスト」優秀作が、
一冊の本になりました。

その名も「鉄道写真図鑑2015」。

すみません、大仰な名前を付けてしまいました(笑)。

「アサヒカメラ鉄道写真コンテスト」は本誌2月号で
結果を発表しました。その際、載せたのは、
グランプリ(1点)、準グランプリ(2点)、入選(10点)でしたが、
今回の「鉄道写真図鑑2015」では、
コンテストの一次審査通過を通過した作品(80点)も掲載。
全93作品が並ぶ一大写真集になりました!

さらに、櫻井さん、中井さんの対談のほか、
アサヒカメラの過去記事から
櫻井さん、中井さんの珠玉の鉄道記事を再編集して載せています。
撮影のコツ、ロケ地の選び方などノウハウが満載です。
ぜひ、お買い求めください!

で……今回の本では、不肖・佐々木が編集後記を書いています。

なぜか?

いろんな被写体がありますが、
鉄道への思い入れがハンパないんですね。

というわけで、誰も読みたくないかもしれませんが、
編集後記に綴った思いを転載させていただきます。

鉄道写真を撮るみなさんへのメッセージです。

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極私的な話で恐縮です。

僕は生まれてから高校を卒業するまで、
秋田市内に住んでいました。
実家はJR奥羽本線上り(土崎~秋田)のほぼ線路沿い。
幼いころから鉄道は身近な存在でした。

とりわけ僕の心を引きつけたのは、
煌々とヘッドライトを照らしながら走り去る
寝台特急「あけぼの」の姿でした。

街灯の薄明かりに照らされて輝く車体は、
実に勇壮でかっこいい。
僕にとっては、憧れの大都会へとひた走る「夢列車」でもありました。

高校卒業後、僕は上京しました。
でも、乗ったのは「夢列車」ではなく、急行「津軽」。
車内にはおじさんたちがあふれ、
ワンカップ酒とさきイカの臭いが充満していました。
さながら「苦役列車」といった雰囲気でしたが、
予備校に通うための上京だったので、
ある意味で似つかわしい電車だったかもしれません。

その後、僕は東京で就職。秋田新幹線が開通すると、
帰省の足はもっぱら新幹線か飛行機、自家用車に。
そして新幹線が高速化するのとは対照的に、
寝台列車は次々に消えていきました。

「あけぼの」に加え、実家の目の前を走る
大阪行きの寝台特急「トワイライトエクスプレス」も
今年3月で姿を消しました。
もはや「夢列車」を見ることすらできなくなったのです。

個人的な話を長々と書いてしまいましたが、
みなさんに共有していただきたいのは、
鉄道事情は時の流れで大きく変わるということです。
「技術革新やライフスタイルの変化によるものだ」と
言ってしまえばそれまでですが、鉄道とは乗客だけではなく、
乗る者や見る者の「思い」も運んでくれるものだと思うのです。

僕がいちばん後悔しているのは、
「夢列車」を写真に記録できなかったことです。
トワイライトエクスプレスには何度か挑戦しましたが、
満足のいく1枚は撮れませんでした。

今回、アサヒカメラの鉄道写真コンテストには、
たくさんの写真が寄せられました。
ご応募いただいたみなさんには、心から感謝申し上げます。

でも、それ以上にうれしかったのは、
みなさんが鉄道をさまざまな形で記録されたことにあります。
車両が写っているかどうかは関係ありません。
もしかしたら、路線の風景や駅の様子が
数年後、数十年後に大きく姿を変えるかもしれない。
みなさんが感じた「鉄道」は、僕の「夢列車」のように、
いつしか消えてしまうかもしれない。
いま記録することが、いつか誰かの「救い」になるかもしれないのです。

そんなことを頭の片隅に置いていただきながら、
これからも素晴らしい鉄道写真を撮影していただければ幸いです。

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