FNS27 時間テレビの総合司会を務めた千鳥
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 企業が製品やサービスを開発する手法には「マーケットイン」と「プロダクトアウト」の2種類がある。マーケットインとは顧客のニーズを起点にして製品開発を進めることであり、プロダクトアウトとは自社の方針や作りたいものを優先して製品開発を行うことだ。

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 大まかに言うと、顧客が欲しがっているものを提供するのか、自社で作ったものを顧客に欲しいと思わせるのか、ということだ。最終的なゴールは同じでもアプローチの方法が違う。

 テレビバラエティの世界で言うと、ここ10年以上も視聴率トップを独走している日本テレビは、マーケットインに特化することで多数の人気バラエティ番組を生み出してきた。

『エンタの神様』などのプロデューサーとして知られる元・日本テレビの五味一男氏は、視聴者の潜在的なニーズに応える番組作りに徹底的にこだわり、数多くのヒット番組を世に送り出した。彼を筆頭とする日本テレビの制作者たちは、視聴者ファーストの番組作りを続けて結果を出してきた。その伝統は現在まで続いている。

 一方、1980年代から1990年代前半にかけてバラエティの王者として君臨していたフジテレビは、プロダクトアウトに特化した番組制作で一時代を築いた。「楽しくなければテレビじゃない」というキャッチフレーズに象徴されるように、テレビの中で何か面白そうなことが起こっている、と視聴者に感じさせるような番組作りを率先して行っていた。

 明るく華やかな世界を見せることで、視聴者が自然にそこに憧れて、引き寄せられる。その結果としてフジテレビのバラエティ番組は多くの人に支持され、高視聴率をマークしていた。

 しかし、時代が進んで人々のニーズが多様化して、テレビというメディアの勢いも衰えていく中で、フジテレビの手法が少しずつ古くなっていった。そして、フジテレビは長い低迷期に入った。かつては民放の中でも視聴率トップを独走していたが、ここ数年は4位が定位置になっている。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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