
このちょっとお洒落で高級感のあるスマートウオッチ、見た目は普通のアナログ時計、デザイン的にはかつて一世を風靡したシチズンのアナデジといった感じだろうか。ところが、スマホに電話がかかってくると、こいつがブルブルと震える。慌てて適当にボタンを押したら、ウルトラ警備隊のバッジのように通話ができてしまった。
最初は違和感があるが、慣れてくると特撮ヒーローにでもなった気分だ。時計に向かってしゃべりかけていると、若干、周囲の視線が気になるが、そんなことはお構いなし。「どうだ、カッコいいだろう」と声に出したくなるくらい、クセになる。用事もないのについつい電話をかけてしまうほどだ。一瞬で童心に帰ることができる、そんなガジェットがアメリカ発のスマートウオッチ「Martian Watches(マーシャンウォッチーズ)」である。
もちろん、機能は通話だけではない。ボイスコマンド機能を使えば、スマホを取り出さなくても操作ができ、音声コマンド応答で相手先に応答もできるのだ。そのほか、メールや、LINE・Facebook・TwitterなどのSNSに送られてきた内容が、文字盤の下の小窓に表示される。バイブレーションの種類をそれぞれで設定しておけば、振動だけでどのアプリが受信中なのかがわかるのもありがたい。
さらに加速センサーが内蔵されているので、時計をした腕を振ることでコマンド指示ができる。どういうことかというと、例えば、会議中で電話に出られず保留にしたいとき、パパッと腕を振れば済んでしまうのだ。
さて、これだけの機能が付いているのだが、ボタンは2つしかない。つまり、感覚とセンスで操作をしなければならないというわけだ。腕を振ったり、ボタンを一押ししたり……。これはひょっとして私にヒーロー戦隊ものレッド役になれと言っているのか?
「敵のアジトに潜入して極秘文書を手に入れろ!」と基地からの通話に「ラジャー」と答え、戦闘中はコマンドでメッセージを送信。「敵に囲まれた」「秘密の通路を見つけた」「ついに秘密文書を手に入れたぞ」なんてね。「只今より帰還する!」とポーズを決めながら通話して、ミッション終了?
妻からかかってきた、「仕事帰りに特売のたまごを買ってきてね」の電話も、マーシャンを使えば何か楽しくなるから不思議だ。
1日使ってみた感想は、「アップルウオッチがテレビなら、マーシャンはラジオ」。とにかく、あのアナログ感が何ともいえない哀愁を感じさせる。使いこなせばこなすほど要求に応えてくれるので、愛着がわいてくるのだ。
そんなマーシャンの市場想定価格は3万2400円(税込み)。1度の充電で使用できる時間は7日間、アナログ時計は2年間動く。そのほか、カメラシャッターの遠隔操作も可能で、iOS・Androidに対応している。
男心をくすぐるガジェットだが、くれぐれもオフィスでのヒーローごっこは自重していただきたい。
(ライター・中森勇人)