――この円安はどこまでいくと思いますか。

藤巻:僕はかなり行くと思っています。1ドルが400円、500円になってもおかしくない。1000円になったら日銀はもうつぶれてしまっているでしょうね。日銀が債務超過になったら紙幣は紙切れ、石ころと同じです。そうなれば1ドル=1兆円でもおかしくない。天文学的数字になると思う。インフレというのはモノとおカネの需給関係で起きるものですが、ハイパーインフレというのはそれと異なり、中央銀行の信用失墜で起きるものです。インフレとハイパーインフレは経済的な意味がまったく違う。そして中央銀行の信用失墜の最たるものが債務超過です。

 このインタビューをしたのは2022年4月だったが、その後の経済状況は藤巻がここで見立てたシナリオ通りにほぼ進んだ。

 資源価格とエネルギー価格が高騰するなかで、2022年の日本の貿易赤字は19兆9713億円にのぼり過去最大となった。米欧の中央銀行による利上げも着々と進んでいる。米FRBは22年3月にゼロ金利を解除してから、翌年5月の政策決定会合まで10回連続で利上げし、政策金利を5.0~5.25%とした。資産の圧縮(量的引き締め)もゆっくりとだが、予定通り進めている。これに対し日銀はマイナス金利を続けており、日米金利差は少しずつ拡大している。

 この状況下で、円安ドル高は急速に進んだ。22年10月21日にはニューヨーク市場で一時1ドル=151円90銭をつけた。バブル経済期以来、32年ぶりの円安水準である。

 ところが、このあと局面がガラリと変わる。政府・日銀による大規模な為替介入がおこなわれたためだ。のちに政府が発表したところでは、この時期の1カ月間の介入額は6.3兆円にのぼった。異例の大規模介入によって、流れが一気に円高方向へと反転した。翌11月になると、円高のピッチが早まり、1日で7円も円高が進んだ日があった。結局、この月だけで9円超の円高が進み、137~138円まで水準を戻したのである。

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為替介入は薄氷の戦いだった