――バブル経済時の日本の消費者物価はどうして安定していたのでしょうか。

藤巻:毎年30~40円幅の円高ドル安が起きていたからです。それが輸入物価のデフレ要因となり、資産効果による強烈なインフレ圧力と相殺し合ったのです。しかし、いまの米国ではそれと比べるとドル相場がずっと安定しているので、当時の日本以上にインフレ圧力が強いはずです。しかも世界的な金融緩和、つまり中央銀行によるおカネの刷り過ぎで資産効果がものすごいことになっている。株が市場最高値で、地価も上がっている。そこにコロナ・ショックとウクライナ・ショックによる供給制約が発生したことが相まって、世界経済に強いインフレ圧力が加わっているのです。

――そのなかで急激な円安が進んでいるのはどうしてですか。

藤巻:いまの円安は3つの要因から起きています。第一に、経常収支の動き。貿易赤字が膨らみ、経常黒字額が大幅に減ってきています。第二に、日米金利差。米国で急激な利上げが始まり、マイナス金利にとどまったままの日本との間で金利差が広がっています。どちらも円安ドル高要因ですが、この二つがこれほどそろって起きたことはなく、初めてのことです。こんなにわかりやすいマーケット状況はありません。米国では史上最大の金融緩和がまだ正常化を終えていない段階で、40年ぶりのインフレが進んでいます。そんなものが本来両立するわけがありません。インフレが最大の問題になりつつあることもあり、金融引き締めはかなり進むでしょう。一方、日銀は異次元緩和を続ける姿勢を崩さない。必然的に円安が進むしかないと投資家は自信をもって円売りドル買いをするでしょう。基本的に今の円安はこの2大要因で進んでいます。

 そして、もう一つ大きいのは米国の金融政策で22年6月から量的引き締めが始まることです。テーパリング(量的緩和の縮小)を21年11月から始めているので、たいして違ったことが起きないと勘違いしている人が多いが、まったくレベルが違います。テーパリングというのは、ゆるやかだけどまだ山を登っている状態です。しかし量的引き締めというのは、山を下りることです。ぜんぜん景色が違う。この3つで円安が進んでいるので、僕はものすごい円安になってしまうのではないかと思っています。

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