得意なフレーズはI can’t speak English.中高大と英語教育を受けてきたのに、英語が苦手という人も少なくないだろう。なぜ日本人は英語がうまく話せないのか、どうすれば上達するのか。専門家に聞いた。AERA 2023年7月31日号から。
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「○○○に行きたいんだけど?」
そう聞いているのは、英語だけど何となくわかる。その店は知っているから説明したい。「信号を右に曲がって20メートルくらい行ったら、左側にありますよ」。そう言えばいいだけ。でも、その英語が出てこない。なんてこった……!
恥ずかしながら、これは記者(50代)の最近の体験だ。中学高校と6年間、英語は学んだ。大学でも英語の授業はあった、気がする。なのに、外国人に英語で道を聞かれてもろくに話せない。でも、そんな人は私以外にも多い、いやそんな人がほとんどなんじゃないか。Whyジャパニーズピーポー!
旅行先でも海外で働く日が来たとしても、英語がわかれば安心だ。何より英語がわかれば世界が広がるし、楽しみだって増えるはず。だから、あきらめたくない。いまから英会話を効率的にラクに楽しく、身につけたい。一発逆転のメソッドを探ってみることにした。
手始めに訪れたのは、大勢の外国人観光客でにぎわう東京・浅草の仲見世通り。
「英語はまったく自信ないです」
こう笑うのは、下駄や草履を扱う「履物さんえす」店主の佐藤克己さん(60)。外国人用に大きなサイズを取り揃え、客が途切れることのない人気店だが、“自分なりの英語”でコミュニケーションしているという。
「よく使うフレーズが二つあります。まずは『こんにちは』と日本語で迎えて店内を見てもらい、気に入った様子なら『Try on please.』と促して自由に履いてもらう。サイズが合わなさそうなら『How long your size?』と聞きつつ、別のを出してあげるんです」
なるほど。それから?
「『I take it.』とか、とにかくtakeという単語が聞こえれば、『買ってくれるんだな』とわかる(笑)。中学生の英語で通じます。加えて笑顔があれば、という感じかな。何とかなります」
接客は見事だった。難しい英語は一つも使っていない。たいていの人に可能そうだが、いざとなると、冒頭の記者のようにできないのはなぜなのか。
「日本人はそれなりの英語力を持っています。なのに、『できません』『しゃべれません』と否定してしまう。私は『アイキャント症候群』と呼んでいます」