「5年ぐらい前は、序盤はある意味適当でした。序盤のセンスというのが自分としては苦手分野だったんです。いきなり変化球投げられてちょっと対応できない、とか。AIを使って序盤の研究をして、色んなプランを立てるやり方を採り入れたことで、名人にまでなることができた。そういう将棋が向いていたんでしょう。ただ、どんなスポーツでも一つのチームがいい状態を保てるのはだいたい3年ぐらい。自分もAI研究を採り入れて3年経ったので、変化を付けなければいけないという気持ちはある。そんなに大きく変えるわけじゃなく、自分にしかわからないちょっとした日々の行動の意識などですね。棋士人生は長いんで、飽きがこないようにやるのも大事と思います」

(文/松本博文)

※松本博文著『棋承転結 24の物語 棋士たちのいま』(朝日新聞出版)から一部抜粋/AERA2021年4月19日号初出

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