「発表会」と聞けば、ピアノなど習い事を思い出す人が多いだろう。本書はそれに限らずアマチュアの出演者自らが出資する公演全般を対象にその機能を見つめ直す、いわば「大人のための発表会論」だ。
歴史、行政、学校教育、産業との関連などを多領域の研究者たちが炙り出してゆく。惹き込まれるのはこれまで気に留めてこなかった分野が現状「発表会化」していることを気づかせる章だ。ミュージシャンとしても活動する宮入恭平は、出演者がライブハウスに所定の金額を支払う「ノルマ制度」がライブハウスの発表会化、ひいては文化産業化をもたらしている現実に警鐘を鳴らす。またミュージアム研究者の光岡寿郎は、画家自らが出品料を払う「公募展」という制度に着目する。今日では時に「権威的」と揶揄されることもある公募展。だが、その裏で見落とされる、日曜画家たちによる「成長確認の場」というもう一つの顔を指摘する。瑣末な対象を扱っているようだが、その実「発表会」という場を通じ、芸術に対する社会の視線を問い直す書だ。
※週刊朝日 2015年4月3日号