そもそも、自殺や自殺の可能性が高いとされる事案で、それもここ最近、中傷するコメントが殺到していた人物が自殺したとみられる、といった内容を伝える記事にコメント欄は必要なのだろうか。
「コメント欄がそのままになっているのは、閉鎖する基準に達していないということなのだろうとは思いますが、ひどいコメントがあることは確認しました。一般論として、コメント欄を設けることは構わないのでしょうが、報道内容によってはコメント欄を設置しないという措置も考えてもよいのかもしれません」
そう話すのはネットの中傷問題に詳しい清水陽平弁護士だ。
清水弁護士は2020年5月に、22歳の若さで自ら命を絶ったプロレスラー・木村花さんへのSNSでの中傷投稿に対し、花さんの母親が起こした裁判で代理人を務めている。
清水弁護士は、花さんの悲劇が起きて以降も、ヤフコメやSNSで中傷のような内容や、誰かを傷つけたり、おとしめたりする内容の投稿を続ける人たちの意識に変化は見られないと指摘する。
■「これは意見だ」の主張
「これは『意見』であり『意見を言うのは自由』だと主張される方が目立ちます。法的に意見と中傷の明確な線引きはありませんし、『意見が自由』なのもその通りです」
と前置きしてこう続ける。
「自由が前提ではありますが、倫理の問題として考えた場合、多数対一人の状況で一人を徹底的に傷つけていいということになるのか。有名人だから何でも意見を言っていいということになるのか。自分が逆の立場なら耐えられるでしょうか。子どもの時に学校などで、人を傷つけることを言っちゃダメだと教わった人はたくさんいると思いますが、ネット社会では、いい大人が『これは意見だ』と主張して誰かを傷つけることが常態化しているのが現実です」
また最近では、炎上を狙ったインフルエンサーらが発信する情報について、一方的で内容に偏りがあるにもかかわらず、うのみにしてしまうネットユーザーが非常に多いとも感じているという。