優紀さんは自分の意思で高校を中退し、通信制の高校に入学した。基本的に登校は月2回でいいので負担が軽く、自分と同じような状況のクラスメイト達がいる。仲のいい友達もできた。

 しかし高校を卒業する日が近づくと、優紀さんは「進路を決めなければいけない」というプレッシャーから、精神不安定になってしまった。電車に乗るとすぐにトイレに行きたくなってしまう。人が怖くて、コンビニでレジに並んでいるだけで動悸がする。誰もいないのに人の視線を感じたり、悪口を言われているような声が聴こえたりすることもあった。

◆精神科医療に解決を求めたが……

 優紀さんとその家族が、最初に解決策を求めた先は、医療だった。姉に勧められ、心療内科を受診することにした。薬を処方され、飲み始めたが眠れない。ほかにも、姉の意見に従い、さまざまな病院を受診してみたものの、症状は一向に改善しなかった。

「もう、無理……」

 自分から精神病院への入院を希望した。

 その後1カ月間の記憶が、優紀さんにはない。

「1階の病室にいたはずなんですけど、いつの間にか2階に移っていたんです。1階の患者さんたちからは、なぜかすごく嫌われていて……。きっと何か迷惑をかけたんでしょうね」

 毎日たくさんの薬を飲まされ、だんだんと体に力が入らなくなってきた。自分の力では起き上がれず、食べ物も、筋力がないから口から流れ出てしまう。

 ついに優紀さんは体調悪化で救急搬送され、集中治療室に。このとき家族は、「このまま寝たきりになることも覚悟してください」と告げられたという。

 幸いなことに優紀さんはそこから少しずつ回復し、元の病院に戻ることができた。入院中は、再び大量の薬を飲み続ける日々。妄想が激しくなって、自分が人を殺したんじゃないか、テレビに自分の名前が出ているなどと考えるようになった。

 「自分はいったい何の薬を飲まされているんだろう」

 薬による副反応を疑い、「帰りたい」と希望を伝えて、退院。優紀さんは20歳になっていた。

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せっかく就職したが…3年足らずで退職