大学の授業で興味を持った分野についてもっと学びたい──。だが文系の学生にとっては、大学院に進学してからの就職が気になるところだ。2年間の修士課程を終えてから初めて社会に出て、どのように活躍できるのだろうか。好評発売中のAERAムック『大学院・通信制大学2024』では、文系大学院卒で就職した人を取材した。
【図版】日本は文系大学院に進む人が少ない! 人口100万人あたりの修士号取得者数の国際比較
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かつて大学院は「研究者への道」という印象が強かったが、今や社会人が学び直すリカレント教育の場として注目されている。だが日本で人文・社会科学系の学部から大学院に進む大学生は少ない。欧米諸国や韓国と比べてもその差は歴然だ(図1参照)。学部生より2年間就職が遅れると不利ではないか、専門分野が生かせるか、そんな不安があるのかもしれない。
では実際はどうなのか? 文系大学院の修士課程を修了して希望通り就職し、その後もキャリアアップを続けている2人に話を聞いた。
■経営学を学んだ経験が生きる業界に就職した
北川莉帆さんは立教大学大学院経営学研究科経営学専攻の博士前期課程を修了し、2018年4月、船井総合研究所に入社した。立教大学3年次のゼミで経営学に興味を持ち、大学院では企業の経営戦略について研究した。就職先にコンサルティング会社を選んだ理由を「早くから経営の仕事に携われるからです」と話す。
船井総合研究所では、税理士事務所の営業活動や所員採用の支援を担当した。経験する業界の幅を広げたいと20年4月にNTTデータ経営研究所に転職、大手企業の情報システム部門で情報セキュリティ体制の整備に携わった。その後、合併・買収後の企業統合を進める案件に興味を持ち転職し、23年1月から業界大手のPwCコンサルティングでM&A戦略の調査分析を行っている。
「大学院の授業では社会人と話す機会が多く、就活の生きた面接対策にもなりました」と北川さんは振り返る。
「大学院では論点の把握と、それについて自分なりに仮説を立ててものごとを深く考える習慣が身につきました。それが就活にも生きて、志望理由が自分のなかで明確になりました。面接ではなぜ修士まで進んだのか、とよく聞かれましたが、経営についてより深く研究したと自信を持って話せました」