水野英子(みずの・ひでこ)/1939年、山口県生まれ。マンガ家。雑誌「少女クラブ」で15歳の時にデビュー。代表作は「星のたてごと」「白いトロイカ」「ファイヤー!」等。2010年、長年の功績が認められ、第39回日本漫画家協会賞「文部科学大臣賞」を受賞した(撮影/写真映像部・上田泰世)
水野英子(みずの・ひでこ)/1939年、山口県生まれ。マンガ家。雑誌「少女クラブ」で15歳の時にデビュー。代表作は「星のたてごと」「白いトロイカ」「ファイヤー!」等。2010年、長年の功績が認められ、第39回日本漫画家協会賞「文部科学大臣賞」を受賞した(撮影/写真映像部・上田泰世)
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 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

『リボンの騎士』(手塚治虫)から『ベルサイユのばら』(池田理代子)に至る、1950~60年代に少女マンガはいかに開拓されてきたのだろうか。少女マンガ界の先駆者たちに加え、少女向け雑誌の編集者や貸本マンガの関係者も登場、黎明期の少女マンガの状況について、具体的に語りあう。詳注・図版も充実した、レジェンドたちの証言集『少女マンガはどこからきたの? 「少女マンガを語る会」全記録』。著者の水野英子さんに同書にかける思いを聞いた。

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 今や伝説となっている「トキワ荘」のなかで、唯一の女性メンバーだったのが、マンガ家の水野英子さん(83)だ。

 レジェンド的存在として名高いが、最近では『復刻版 ファイヤー!』が刊行されるなど、あらためて注目されている。そんな水野さんが1999年に呼びかけて始まったのが「少女マンガを語る会」だ。本書は4回にわたり開催された、その貴重な記録をまとめたもの。カラー図版や豊富な資料、索引も充実している。

「少女マンガの黄金期は1970年代だと言われてきました。けれど実際には50~60年代に、上田トシコさんや今も現役で活躍するわたなべまさこさん、男性もちばてつやさんや高橋真琴さんなど、多くのマンガ家が新しい表現に挑戦しています。ただ戦後の貸本マンガの時代と重なっていたり、いわば忘れられた時代になってしまったのです」

 ヒロインが王子として活躍する、手塚治虫『リボンの騎士』が描かれたのが53年。そこから72年に池田理代子『ベルサイユのばら』が登場するまでの20年間にも、多くの女性がマンガ家としてデビューし、多様な作品を描いていたことが本書を読むとよくわかる。

 第1回目の<少女マンガ家の誕生>に始まり、<少女マンガはいかに編集されてきたか><少女マンガが読者の手にわたるとき><「少女マンガ」というジャンルの成立>と、本書はまさに黎明期の少女マンガを、当事者の声で多方面から語りなおしていく。

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