土方歳三(ひじかた・としぞう 1835~69年)。近藤勇、沖田総司らとともに将軍警護の任を帯びて上洛、新選組結成後は副長として活躍した(写真:国立国会図書館提供)
土方歳三(ひじかた・としぞう 1835~69年)。近藤勇、沖田総司らとともに将軍警護の任を帯びて上洛、新選組結成後は副長として活躍した(写真:国立国会図書館提供)
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 映画「燃えよ剣」で岡田准一さんが演じた土方歳三をはじめ、沖田総司、斎藤一ら幕末を代表する剣客が名を連ねていた新選組。「剣」に生き、「誠」に殉じた。漢(おとこ)たちの中で、誰が最も強かったのか。AERA 2023年7月17日号の記事を紹介する。

【本当に強いのは誰だ!?】新選組最強ランキング「ベスト10」はこちら


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 幕末の京都──。勤皇の志士たちを震え上がらせ、天下にその名を轟(とどろ)かせたのが新選組だった。司法・行政から超越し独自の機動性を許された特別警察ともいうべき存在だった新選組には、名だたる剣の遣い手が揃っていた。


「いったい誰が最も強いのか」。古今、新選組ファンの間では議論が尽きないテーマである。そこで今回は、歴史作家で大河ドラマ「新選組!」や「龍馬伝」の時代考証も務めた山村竜也氏が新選組隊士の剣技・実戦経験・闘争心・統率力・忠誠心について採点。「最強ベスト10」を決定した。


 山村氏がすべての項目に満点をつけ、堂々の第1位に選出されたのが局長の近藤勇。山村氏も「剣技からメンタル面まで、全項目で満点を付けざるを得ないほど圧倒的」と評価した。


近藤勇(こんどう・いさみ 1834~68年)。京都守護職・松平容保の支配下に属して新選組を率い、京都市中の治安維持に尽力した(写真:国立国会図書館提供)
近藤勇(こんどう・いさみ 1834~68年)。京都守護職・松平容保の支配下に属して新選組を率い、京都市中の治安維持に尽力した(写真:国立国会図書館提供)

 近藤勇は、江戸における剣術の一派・天然理心流の四代目宗家を28歳で継ぎ、新選組結成以前から知る人ぞ知る存在だったという。


「のちに新選組の幹部となる永倉新八の回想によると、当時、道場には朝から50~60人の門弟が出入りして稽古に励む竹刀の音が絶えなかったそうです」(山村氏)


■池田屋事件での武勇


 沖田総司や土方歳三をはじめとする門下生のほか、この永倉や山南敬助など他流派で確かな修行を積んだ剣客までが近藤のもとに身を寄せたのだから、その腕前は確かだったのだろう。また、この道場主としての経験が新選組を束ねる統率力の下地になったと思われる。


 文久3(1863)年、近藤一派は上洛して新選組を結成。近藤がそのトップ(局長)に据えられたのも自然の成り行きといえた。そんな彼の能力が最大限に発揮されたのが翌元治元(1864)年の「池田屋事件」だ。局長みずから「御用改めであるぞ」と邸内に躍り込み、2階にいた長州をはじめとする志士二十余人と対峙。今回のベスト10にもランクインしている剣の遣い手・沖田、永倉、藤堂平助らが苦戦するなか、近藤は愛刀虎徹を閃かせ、斬り結び続けた。山村氏によると「踏み込んだ4人のなかで近藤だけは無傷だった」という。彼の実戦的な剣技と闘争心は確かなものだった。

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