2013年2月15日、直径約17メートルの小惑星が地球に衝突、ロシア・チェリャビンスク州に被害が出た。氷結したチェバルクリ湖には隕石片で開いた穴が見られた
2013年2月15日、直径約17メートルの小惑星が地球に衝突、ロシア・チェリャビンスク州に被害が出た。氷結したチェバルクリ湖には隕石片で開いた穴が見られた

■小惑星の軌道逸らす


「実際、チェリャビンスクの衝突は事前に探知できていません。ただ、観測技術は年々向上しています。私は当時、『この規模だと事前に見つけるのは難しい』と解説していましたが、今なら見つけられる可能性もあります。事実、これまでに7例、事前に衝突を探知できた事例がありました(被害なし)。かなり小さなもので直前の発見でしたが、大きいほど早く発見できる可能性が高まります。観測を続けることは非常に重要です」


 日本では、地球に接近して見かけの速度が速くなった微小NEOを「重ね合わせ法」という技法や「トモエゴゼン」という新しい観測装置で見つけ出す技術が進んでいる。また、27年にはNASAがNEO探査用の宇宙望遠鏡を打ち上げる。観測はさらなる進歩が見込まれる。


 では、実際に衝突がわかった場合、どうするのだろう。映画「アルマゲドン」では小惑星に穴を掘って内部に核を仕込み、起爆させた。さすがにそれは非現実的だが、核ミサイルを撃ち込むのはありなのでは? だが、前出の吉川さんはこう否定する。


「核を使うこと自体の是非もありますが、ミサイルで小惑星をバラバラにしても破片が地球に降り注ぎます。小惑星を粉々にはできませんから大きな破片が多数地球に落ちてきて被害を回避できないでしょう。現実的なのは、小惑星を破壊せずに軌道を逸らすことです」


 小惑星の軌道変更──。壮大な話だが、実際に実験が始まっている。NASAは去年、地球接近小惑星ディディモスの衛星であるディモルフォスに探査機を衝突させた。天体の軌道変更を目指した世界初の実験だ。ディモルフォスの直径は約170メートル。重さ約570キロの探査機を相対速度秒速6キロで衝突させたという。


「衝突でディモルフォスの公転速度が秒速2.7ミリほど変化しました。単純計算すると、この大きさの小惑星なら10年後の位置を1千キロ近く動かせるということ。想像以上の成果です」(吉川さん)


 地球の直径は約1万3千キロ。数十年猶予があり、2回、3回と探査機を送れば衝突を回避できそうだ。また、来年にはESAが探査機を打ち上げ、ディモルフォスを目指す。27年に観測を始め、昨年の衝突による地形変化を詳細に調べる予定だ。JAXAも赤外線カメラの提供で参画する。

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