1972年3月に制作したファーストアルバムは、レコード会社が「歌詞が過激すぎる」として発売中止。同年5月に発売した2作目も、発売1カ月後に販売中止・回収となった。PANTAさんは、当時を振り返り、「世の中には男と女の歌ばかり。俺はそうじゃなくてもいいと思ったわけ。反抗、反骨、反逆……ロックである以上、『反』を表現するのは当然だろう」と語っていた。聴く側は、政治的な過激さを求めた。「銃をとれ!」「ふざけるんじゃねえよ」といった強い歌詞が支持を集めた。だが、政治の季節が終わり、バブル経済に続く大量消費社会が本格化すると、PANTAさんは「過激な人」という色眼鏡で見られ、頭脳警察は居場所を失った。75年に解散した。
PANTAさんの引き出しは多く、79年にはPANTA&HAL名義のアルバム「マラッカ」がヒット。CMソングを歌ったこともあったし、沢田研二さんら多くの人気ミュージシャンに楽曲を提供してきた。だが、活動の軸は「反」を貫く頭脳警察にあった。何度も再結成し、2008年には寺山修司の詩に曲をつけた「時代はサーカスの象にのって」を発表した。PANTAさんは、歌詞の一節「戦争と戦争の間に私(おれ)たちはいる/それを忘れることはない」という部分が好きで、何としても曲にしたかったと言っていた。長年の友人で、作家の橋本治さん(故人)もこの曲を気に入り、「時代にあらがって輝くのがPANTAの個性。時代という言葉を歌って、彼ほど似合う人はいない。PANTAの生きざまには一貫性がある。誤解しちゃいけないよ。彼は過激な人でなく、普遍的な人なんです」と語っていた。
09年にインタビューした際、PANTAさんは「俺はね、これからもずっと『文句を言われる側』に立ち続けたい。世の中、文句を言うヤツがあふれているけど、文句を言う前に行動しようよと言いたい」と語っていた。10年後の19年、頭脳警察結成50周年記念パーティーで雑談した際には、「相変わらずだよ。世の中が良い方向に向かっているとは思えないから、頭脳警察の出番はなくならない」と笑っていた。