インタビューで語るPANTAさん。「全共闘時代の判断基準は善か悪か。それが損か得かになり、好きか嫌いかに変わった。そんな基準もあいまいになった今、若者は確信のもてる何かを探している」=2002年4月、佐藤修史撮影
インタビューで語るPANTAさん。「全共闘時代の判断基準は善か悪か。それが損か得かになり、好きか嫌いかに変わった。そんな基準もあいまいになった今、若者は確信のもてる何かを探している」=2002年4月、佐藤修史撮影

 過激な歌詞と似つかわしくない、やさしい人だった。初対面の人でも、気さくな笑顔で接し、すぐに友だちのようになる。多くのミュージシャンに慕われ、ファンとの距離も近かった。右翼団体「一水会」の顧問だった鈴木邦男さん(故人)らと一緒に開戦直前のイラクを訪問したり、「日本赤軍」の重信房子・元最高幹部と交流を続けたりするなど、人脈は広かった。

 頭脳警察オフィシャル・ツイッターは、こう書いた。

「闘病の中もROCK魂を貫き、最後の時まで現役の『ROCK屋』としての人生を全ういたしました。6月14日のライブが最後のステージとなりました」

 最後のステージでは、湾岸戦争(1990年)のころに発表した曲「万物流転」も披露された。

ああ 何も変わらない/それなのに/それなのに/ああ 変わったふりしてる/おまえのため/ほら万物流転

 時代は移り変わり、PANTAさんを「英雄」にしたり、「過激な人」にしたりした。世の中は進歩して、古い思想や道具は置き去りにされていく。でも、オールドテイストの音作りと社会を批判的に見るPANTAさんの視点は一貫していた。この日のアンコールは、内田裕也さん(故人)のカバーでも知られる代表曲「コミック雑誌なんか要らない」。会場の大合唱でPANTAさんのステージ人生は幕を閉じた。

 だが、来年の結成55周年に向けて制作中だったアルバムは、これから生まれる。マネジャーよれば、PANTAさんのボーカル部分の収録は終えていて、「いずれ完成させ、必ず世に出す」という。いま、この時代こそ、頭脳警察を求めているはずだ。(佐藤修史)

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