「これまでにも現代に田中角栄がいれば、よりアメリカに対して自律的な政治もあり得たのではないかとか、あるいは日中関係も別のあり方があったのではないかとか、そういった仮説がいろいろと述べられてきました」

 しかし、永江氏は“角栄本”と“”安倍本“は異なった読まれ方をしていると指摘する。

「もちろん、田中角栄氏の書籍も、1960~70年代のいわゆる高度経済成長期を懐かしむという、レトロスペクティブな気持ちというのはあると思う」とした上で、こう続ける。

「しかし、田中氏の場合は政治家としてどうだったのか、あるいは彼が体現した日本の戦後の政治とは何だったのかという毀誉褒貶の激しい中で多数の書籍が出版されているというのと比較すると、礼賛が多い安倍本はそれとは異質の感じがあります」

 これから一体どういった書籍が書店に並ぶのだろうか――。

(AERA dot.編集部・唐澤俊介)

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