“ドラフトの目玉”として巨人にドラフト1位で入団した左腕の辻内崇伸
“ドラフトの目玉”として巨人にドラフト1位で入団した左腕の辻内崇伸
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 野球界では昔から『右(利き)よりも左(利き)の方が有利』という格言がある。打者に関しては左打の方が一塁ベースまでが近く、内野安打の可能性も当然高くなる。一方の投手も左投手は右投手よりもボールが速く見えると言われており、また右投手に比べて絶対数が少ないことからも、ドラフト候補でも同程度の力量であれば左投手の評価は高くなることが多い。

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 しかし過去のドラフトの結果を見てみると、高い評価を受けてプロ入りした左投手が苦戦することが多いのもまた事実である。2005年には夏の甲子園で19奪三振をマークした辻内崇伸(大阪桐蔭)が大きな話題となり、高校生ドラフトで2球団競合の末に巨人に入団したが、プロでは一軍で一度も登板することなくユニフォームを脱いでいる。2007年には北京五輪予選でアマチュアから唯一選出された長谷部康平(愛知工業大)に注目が集まり、大学生・社会人ドラフトで5球団から1位指名を受けて楽天に入団したものの、プロ9年間で通算11勝に終わっている。

 このような例があるからか、左投手はプロ入り前の評価が高くてもなかなか大成しないというジンクスが囁かれることもある。果たしてそれは本当なのだろうか。統一ドラフトとなった2008年から2017年までの10年間にドラフト1位で入団した左投手は30人を数えるが、その中から勝利数、セーブ数、ホールド数の合計が50以上に達している選手は以下の7人だった。(以下、成績は全て7月6日終了時点/※は日米通算)

菊池雄星(2009年西武1位):101勝2セーブ ※
岡田俊哉(2009年中日1位):19勝19セーブ62ホールド
大野雄大(2010年中日1位):84勝2ホールド
榎田大樹(2010年阪神1位):29勝3セーブ60ホールド
松永昂大(2012年ロッテ1位):16勝1セーブ135ホールド
松井裕樹(2013年楽天1位):24勝214セーブ72ホールド
岩貞祐太(2013年阪神1位):39勝46ホールド
今永昇太(2015年DeNA1位):62勝4ホールド
堀瑞輝 (2016年日本ハム1位):13勝8セーブ70ホールド


 彼ら以外では松葉貴大(2012年オリックス1位・42勝)、山崎福也(2014年オリックス1位・34勝3ホールド)、小笠原慎之介(2015年中日1位・38勝)、浜口遥大(2016年DeNA1位・39勝2ホールド)、東克樹(2017年DeNA1位・25勝)、田嶋大樹(2017年オリックス1位・34勝)の6人も今後基準とした数字をクリアする可能性はありそうだが、仮に全員が到達したとしても成功選手の人数は15人であり、約半数となる。成功率は50%程度と言えそうだ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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