こうしたブームにも陰りが見える。96年頃をピークに1000万人を超えていた加入者は減少し始めて、ブームは瞬く間に終焉を迎えてしまう。
そして、ポケベルに取って代わったのが、携帯電話やPHSだ。当時は高価だった携帯電話に対して、ポケベル並みに価格が安いPHSが、ポケベルブームの終焉を早めたと言える。その結果、ポケベルサービスを提供していた企業は、次々とそのサービスを廃止していった。
だが、ポケベルは過去の遺物になってしまったわけではない。関東地区でサービス提供していた東京テレメッセージは、経営危機を迎えたが、株主を変えて、今もサービス提供を続けている。だが、その使われ方は、以前とは異なっている。
まず、防災ラジオとしての活用だ。神奈川県茅ケ崎市は、ポケットベルと同じ周波数帯を活用した独自の新型防災ラジオを東京テレメッセージと共同開発した。その防災ラジオを同市が1万台導入し、順次市民に有償で配布しているという。
千葉県鴨川市は、平成 25 年度補正予算で防災ラジオ・システムを導入した。そのほか、東京都江東区・豊島区はポケットベルと同じ周波数帯の無線システムを導入して、防災情報を配信する。
民間企業でも、活躍している。名古屋市に本社を置く外食チェーン「すがきや」では、店内での連絡ツールとしてポケットベルの技術を活用。顧客に渡した端末が鳴って料理ができたことを教えてくれるのだ。このほか、病院内での医師の連絡ツールとしても利用されるなど、ポケベルは今なお“現役”なのである。
なぜ、ポケベルは生き残ったのか、それは、非常に安定した周波数帯を利用していて、電波が届きにくいという状態が発生しにくいためだ。この利点が、防災対策や医療現場で評価されている。
その安定性は、ポケベルに3470(さよなら)を言わせなかったのである。
(ライター・里田実彦)