公衆電話では、ダイヤルボタンを早打ちする姿がたくさん見られた
公衆電話では、ダイヤルボタンを早打ちする姿がたくさん見られた

 1993年にヒットした「ポケベルが鳴らなくて」というドラマを覚えている方も少なくないだろう。いわゆる「不倫ドラマ」なのだが、このドラマのタイトルには、相手と自由に連絡が取れないため、ポケベルでの呼びだしだけが頼りという“意味”が込められている。

 そもそもポケベルは、電話回線を使った受信機だ。1960年代後半に開発されたのだが、80年代後半にようやく価格が下がり、一般にも普及し始めた。

 電話番号がポケベルに割り当てられ、その番号に電話をかけると、ポケベルから音が鳴る。当初は、外出が多い営業マンが、会社や顧客から連絡を受けるためのツールとして普及した。その頃のポケベルは、一桁の数字が液晶画面に表示された。あらかじめ番号を決めておけば、どこの会社の呼びだしなのか、わかるようになっていた。

 当初は、純然たるビジネスツールだったポケベル。しかし、90年代に入ると、その状況が一変する。機種が新しくなり、複数の数字が表示できるようになった。この結果、ポケベルでやりとりされるメッセージに変化をもたらしたのだ。

 たとえば、「14106(愛してる)」「0843(おやすみ)」「3470(さよなら)」といったプライベートなメッセージだ。

 さらに、改良を重ねたポケベルは、数字だけではなく、カタカナ表示もできるようになった。ポケベルに電話をした人が特定のコードで数字を入力すると、カタカナでメッセージが送れるになったのだ。「ア」は「11」、「イ」は「12」、カは「21」といった具合に、五十音表に対応していた。

 これが爆発的なヒットを生む。女子高生や女子大生の間では、ポケベルが“必須アイテム”となったのだ。当時は、友人や恋人と連絡を取り合うため、公衆電話に列を成す若者の姿が話題にもなった。また、援助交際にも利用され、社会問題となったケースも…。

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