■本気で好きになった年下のイケメン

「第2次審査は相手の子供が欲しいか、の見極め。ルックスとか頭脳、才能とか……どうしてもその人の遺伝子が欲しい!と思える人なら」

 が、次々につく「いいね!」の中には別の罠があった。

 実はアプリ初心者の頃に出会い、本気で好きになった年下のイケメンに、やり逃げされてしまったのだ。彼も「いいね!」1000超えの人気者で、プロフィールにはIT経営者、年収1000万円、未婚、と書かれていた。白シャツが爽やかな坂口健太郎似の41歳で、新宿のレストランで会った時も、「アヤさんとは結婚を前提に考えていきたい。他の男性にはもう会わないでほしい」と情熱的に話していた。

 その真剣さに負けて二次会はバーへ、そしてそのままホテルに宿泊した。セックスもおしゃべりも音楽も相性は最高で朝まで夢のように楽しい時間を味わい、この人こそが運命の人だと実感したという。が、相手はアヤさんと関係を持った後、LINEの連絡もぷつんと途絶え、すぐにアプリを退会して姿をくらましてしまった。セックスだけが目的のヤリモクが運営に訴えられないように、よく使う手だ。

「いつもならそんな失敗はしない慎重派なのに、この時だけは『ど真ん中のタイプ』だったため見誤った。ディナーの料金も請求しなかったし単に遊びたかったんでしょうね」

 その悔しさはいまだに尾を引いている。それ以来、自分も多くの「いいね!」を集めて、マッチング相手を転がすことしか考えられなくなった。

「相手が自分のためにどこまでしてくれるかを見極めて、それを付き合うかどうかの判断材料にしています。相手が支払う額はその証明っていう感じですね。口先だけでなんとでもごまかせる言葉より、苦労して稼いだお金のほうがよっぽどバロメーターになる」

 理想の結婚のためだった努力が、いつの間にか「いいね!1000」のアプリクイーンを維持することに変わっていた。アプリは一度ついた「いいね!」がずっと保存されるわけではなく、毎月「いいね!」が新しく増えないと目減りしていく仕組みだ。何か呟いたり、写真を追加したり、新しいコミュニティに参加したりして活動しないと、プロフィールが人々の目に触れる機会も減り、「いいね!」はどんどん減っていくことになる。

次のページ 女王の座を守るための集票活動