■自分に都合のいい人にしか会わない
Bさんは恋愛に大きなコンプレックスがある。これまでの恋愛で本命を落とすための当て馬的な役割をさせられることが多く、「自分は本命になれない」ということがトラウマになっていたのだ。それがアプリに登録してますます強くなったという。
「モテる女性は複数進行が当たり前で、同時に何人ものマッチング相手と会って振り落としていく。ぼくはいつも最初に振り落とされる立場だから、最初から複数進行の女性はお断りなんです。プロフィールにもそう書きました」
だが、どんな巡り合わせか皮肉なことに、そんなBさんにアヤさんが「いいね!」を送ったのだ。会おうと誘うアヤさんへの返事は「お誘いはありがたいが、複数進行ならお断りします」。今まで褒めちぎるだけのメッセージに慣れていたアヤさんはこの返事に逆上した。「私に会いたいという人が何十人も待っているのに失礼すぎる。あなたは何様なんですか?」何通かのメールで立て続けに攻撃されたBさんは、今、アヤさんをブロックして防戦している。
このバトル、どちらも気持ちはわかるが、お互い結婚できない理由がここに凝縮されている気もする。つまり自分に徹底的に都合のいい相手としか会わない、それ以外は価値がない人間という偏った考え方だ。都合の良い相手というのはセフレだったり財布代わりや一方的な精神安定剤だったりするわけで、良い結婚相手とはむしろ真逆なベクトルなことも多い。
同時進行から始まるのが当たり前のマッチング・アプリで、Bさんのように「他に候補がいるなら自分を選ぶな」というのは、実は自分を特別扱いしろという傲慢さの裏返しだし、それに逆ギレして「私のようなセレブには会ってもらっただけで喜ぶべき」というアヤさんもあまりに傲慢すぎる。たとえ「いいね!」が1000の美女、イケメンでも、気に入らなければ断られるのは当たり前なのだ。
こんな2人がほんの弾みでマッチングするのだからアプリは怖い。