廣津留すみれ(ひろつる・すみれ)/バイオリニスト、起業家。1993年生まれ、大分市出身。米ハーバード大卒業、ジュリアード音楽院修了。国際教養大や成蹊大で教える。著書に『新・世界の常識』など(写真:本人提供)
廣津留すみれ(ひろつる・すみれ)/バイオリニスト、起業家。1993年生まれ、大分市出身。米ハーバード大卒業、ジュリアード音楽院修了。国際教養大や成蹊大で教える。著書に『新・世界の常識』など(写真:本人提供)
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 かけた時間に対する効果を表す「タイパ」が重視される時代、「ChatGPT(チャットGPT)」を活用する人はますます増えるだろう。ただ、どんなに使いこなせても、これまで以上に求められるものがあるという。ハーバード大卒のバイオリニスト、起業家の廣津留すみれさんが語る。AERA 2023年7月10日号の記事を紹介する。

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 2012年、大分の県立高校から現役で米ハーバード大に進学しました。当時の受験に必須だったのは、米国の大学進学に必要なSAT(大学進学適性試験)の点数と小論文数本、高校の成績と先生の推薦状、課外活動の履歴と面接です。それぞれ対策は大変でしたが、期日までに送信。面接は電話とオンラインでした。

 約10年が過ぎ、ハーバード大の入試は、コロナ禍の影響もありましたが、22年にSATが任意になりました(26年まで)。筆記試験で測れる学力で学生を判断しないことは、他の難関とされる海外大にも広がるビッグムーブだと感じています。

 ハーバード大で過ごす中、よく言われたのは「あなたたちは世界のリーダーになる」ということ。学生たちは各分野のスペシャリストであり、誰もが自信に満ち溢れていました。同時に、そこに至るまでの壮絶な努力を重ねていることもわかるので、互いへのリスペクトが深い。相手を思いやる雰囲気はとても過ごしやすいものでした。

 もちろん授業はとてもハードでしたし、24時間開いている図書館で必死で勉強しながら朝を迎えたことが何度もありますが、当時から学力よりも人間力が問われる世界だったことは間違いありません。生成AIが登場し、「タイパ」と「コスパ」のために活用する人は増えるでしょう。筆記試験をChatGPTに任せると誰もが良い点数を取れるかもしれません。けれど、人間性はごまかしがききません。これまで以上に中身をどう磨くかを考える時代になったと感じています。

(構成/編集部・古田真梨子)

AERA 2023年7月10日号