大人になってからも親との関係に悩む人は多い。早稲田大学スポーツ科学学術院教授で精神科医の西多昌規さんは、「子どもの頃の親との関係は将来的にも強く影響を及ぼす」という。西多さん監修の『やめてもいいこと86 心の疲れをとる事典』(朝日新聞出版)から、親との関係を見つめ直す方法を紹介する。
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子どもの頃から反抗期もなく、親との関係も良好。しかし、「自分はこれまで親の言いなりになって生きてきたのでは」とふとした疑問がわくようであれば、自分を見つめ直す機会かもしれません。
親の庇護下にある未成年のうちに反抗したことのないタイプの人は、無意識に親の考え方や期待に沿うクセがついているため、自分でジャッジすること自体ができなくなっている場合があります。
この場合、そもそも自分が何をしたいのかすらわからないという人も少なくありません。親の希望する会社に就職し、親が安心しそうな人と結婚するという人生が嫌なのであれば、親の呪縛から解放され、自分の人生を歩んでいくための行動が必要です。
親の敷いたレールの上ではなく自分の足で歩いていかなければいけません。そこでまず、「親に対して、どうしても自分が通したい意見は何か」「自分のやりたいことはあるのか」を自分のなかでじっくり見極めてください。
その上で、「もう親の言うことばかり聞いてはいられない」と思うのなら、そのままストレートに親に伝えましょう。人は「譲れないもの」を持って初めて大人になります。親に反対され、自分の気持ちがゆらがないためにも、はっきり自己主張しましょう。
■「毒親に悩んでいる」が関係を断ち切れない
毒親とは、子どもの人生を支配し、子どもに害悪を及ぼす親のこと。1989年に米国のセラピストであるスーザン・フォワードが自著『毒になる親 一生苦しむ子供』のなかで使用したのが最初と言われています。
肉体的な虐待のみならず、一方的な価値観の押し付けなどによって、毒親に傷つけられた子どもの心は年齢を重ねても癒されることはなく、子ども時代に植え付けられた「感情の種」が不安や怒り、過剰な義務感、罪悪感となって大人になった自分に害を与え続けるというものです。