いま中国で大ヒットしているという雑誌『知日』。「日本を知る」という意味の、そのタイトルに示されるように、日本の文化やライフスタイルを紹介すべく、2011年1月に北京で創刊された月刊誌で、現在28号まで刊行されています(2015年3月現在)。
2010年に起きた尖閣諸島沖での漁船衝突事件や反日デモ等の報道により、日本の文化について紹介した雑誌が中国でヒットしているということに、意外な感覚を覚える方も多いかもしれません。
しかし、『知日』の主筆であり、『知日 なぜ中国人は、日本が好きなのか!』の著者のひとりで神戸国際大学教授の毛丹青さんは、「確かに7万人が集まった『反日デモ』は事実です。でも、同時に10万人の『知日』の読者が存在するという事実も、ぜひ日本の皆さんに知っていただきたい」(本書より)といいます。
『知日』編集長である蘇静さんも、中国での日本への関心の高さが、刊行を思い立つ背景にあったのだといいます。
「2010年前後、およそ日本に関係する本、日本人作者の本はよく売れていたんです。『徳川家康』がミリオンセラーになっていたし、東野圭吾などの推理小説もよく売れていた。でも、日本に関する本は、ある時ポツリと出て、またある時ポツリと出る。散発的で系統だっていなかった。日本に関する書籍は1冊1冊がよく売れるんだから、まとめて定期刊行物にしたら売れるんじゃないか、そう思ったのが出発点です」(本書より)
本書では、これまで『知日』がどのような日本文化をとりあげてきたのか、実際の誌面の写真等と共に紹介。『知日』のこれまでの軌跡がわかる1冊となっています。なお同誌を創刊号から順に見ていくと、奈良美智、制服、美術館、本、猫、鉄道、明治維新、妖怪、森ガール、禅......と、実に様々なテーマが扱われています。
たとえば、2013年2月1日発売の第8号のテーマは「妖怪」。源は中国でありながら、日本に入り独自の変遷を遂げたものとして、日本の妖怪に着目し、神話である八岐大蛇から平成の漆原友紀『蟲師』まで、さらには「小豆洗い」や「猫又」といった少々マニアックな妖怪も網羅。そしてこの号は、オカルト好きの若年層に大受けし、『知日』歴代売上、第4位を記録したのだそうです。
『知日』のヒットでより明らかになった、中国での日本文化への関心の高さ。中国の人たちが、日本の文化のどのような点に興味を持っているのかを知ると同時に、日本からもまた、中国における現代の文化を知りたい、と欲する動きが出てくるべきなのかもしれません。