ちなみに、トヨタではこのような思考回路や行動原理を「標準化」と言うのですが、なぜか資料作成やコミュニケーション領域に関してはブラックボックスのままだった部分が多かったため、私は職場で目にする「紙1枚」資料に何か共通点はないだろうかと、独自に日々研究することを始めたのです。
その成果の1つとして重要な本質を見出すことができました。
■最も現実的に機能する共通言語「2W1H」
「現状」「課題」「対策」「要因解析」「背景」「今後に向けて」「スケジュール」「発注先の決定方法」「予算規模」、等々。
各資料の項目名だけを見ると表現はバラバラなのですが、これらをさまざまな切り口で分類できないかと考え抜いた結果、次の3つでグルーピングした時が最も現実的に機能しそうだということがわかったのです。
●What?:現状、概要、課題、問題点、討議内容、詳細情報、等
●Why?:理由、要因解析、本資料の背景、経緯、当初の目的、等
●How?:実行計画、今後の対応、スケジュール、展望、見通し、等
端的に言語化すれば、人は誰しも「What?」「Why?」「How?」の3種類の疑問を抱き、これらが解消すると「わかった」という納得感が生じる。
だからこそ、どの「紙1枚」資料も、煎じ詰めればこの3つを最小単位にして構成されているし、そうであるならば、いついかなる目的でどんな資料を作る際にも、何項目もテーマを設定するのではなく、この3部構成1パターンで作成していけば良いのではないか。
その後、実際に「What?」「Why?」「How?」という「3」を軸にした資料で報連相やプレゼンを実践したところ、「いつも説明がわかりやすいね、ありがとう」と言われるようなコミュニケーションスタイルを確立することができました。
まさに、タイプ間の垣根を超え、相互理解に至れる「共通言語」の本質。
それが、「What?」「Why?」「How?」という3つの疑問を解消しながら行っていくコミュニケーションなのです。
●浅田すぐる(あさだ・すぐる)
「1枚」ワークス株式会社代表取締役。「1枚」アカデミアプリンシパル。動画学習コミュニティ「イチラボ」主宰。作家・社会人教育のプロフェッショナル。名古屋市出身。旭丘高校、立命館大学卒。在学時はカナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学留学。トヨタ自動車(株)入社後、海外営業部門に従事。同社の「紙1枚」仕事術を修得・実践。米国勤務などを経験したのち、(株)グロービスへの転職を経て、2012年に独立。現在は社会人教育のフィールドで、ビジネスパーソンの学習を支援。著書に『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』(サンマーク出版)、『早く読めて、忘れない、思考力が深まる 「紙1枚! 」読書法』(SBクリエイティブ) などがある。