■靴ずれで遭難も
富士山はほかの山と比べて特に標高が高いため、高山病を発症し、助けを求める登山者も少なくない。
「頭痛やめまい、吐き気がする。それでも登り続けて動けなくなってしまうわけですが、そうなる前に、勇気を出して下山していただきたい。高山病の『特効薬』は、高度を下げることです。それだけで、シャキーンと元気になる人もたくさんいます」と、山内課長補佐は語る。
富士山は「観光の山」でもあるので、安易な装備で入山する人も多い。
「靴ずれを起こして歩けなくなった、という遭難もありました。最近はネット通販で靴を買われる方もいらっしゃいますが、登山用の靴は必ずお店に行って、試し履きをして、自分の足にフィットすることを確認したうえで購入してほしい。細かい話なんですが、山登りで靴ずれになると、本当に歩けなくなってしまいます」(同)
100円ショップで購入した懐中電灯が壊れてしまい、行動不能に陥り、救助を要請したケースもある。
「装備全体に言えることですが、装備は登山用のしっかりしたものを用意してほしい。天候が急変して雨が降れば、強い風雨になります。風でめくれ上がらない、しっかりしたレインウェアが必要です。低体温症を防ぐには吸汗速乾性のある肌着を身につけることも有効です」と、山内課長補佐は訴える。
遭難者の約8割は県外からの登山者だという。
「天候や体調がいまひとつでも、『せっかく来たんだから登ろう』となりがちなんですが、悪天候や体調不良で登っても楽しくありません。そんなときは、また後日の楽しみにしていただきたい。十分に余裕のある計画を立てて、体調と装備を整えて、楽しい思い出となるような富士登山をしてほしいと思います」(同)
静岡県警地域課はTwitterでさまざまな実践的アドバイスを発信しているので、ぜひ参考にしてほしい。
■ご来光だけが富士山じゃない
ちなみに、今年の富士山は山小屋が満室だから登れない、というわけでは全くない。