「学校の先生が『教師人生でそんな才能の子どもを見たことがない』とつぶやいたと聞いたことがあります。この先生の感覚は決して間違っておらず、ギフテッドのイメージが超人的なものに限定されてしまったことに誤解の原因があると思います」と角谷教授。
つまり、超天才がギフテッドだと誤解をしてしまうと、学校の先生たちは自分たちの教え子の中にギフテッドがいるにもかかわらず、気づかない可能性があるということになる。
角谷教授によると、ギフテッドとされる子どもは様々な才能において3~10%程度いるとされている。35人がいる教室では、1~3人のギフテッドがいることになる。「教師人生で見たことがない」どころか、今の教え子の中にもギフテッドがいるかもしれないのだ。ギフテッドのうち、9割を占めるのがIQ120~130の人で、「人並み外れた超人的な才能を持った天才」とイメージされるIQ160を超えるような人は、ギフテッドの中でもごくごくわずかだという。
「学校の先生であれば、毎年ギフテッドに出会っている可能性が高い。想像よりも多くの子どもたちが『学校の勉強は知っていることばかりでつまらない』という悩みや自分の特性を理解されずに困っている可能性があります」
■授業に愛想をつかす場合も
IQ120~130の人たちは目に見える異能ぶりを発揮するものなのだろうか。
「IQ120前後の子どもが何らかの特定の教科で目をみはるほどの才能を発揮しているということはほとんどないでしょう。なんとなく、頭は良さそうで面白いところに気づくとか、ちょっと変わっているとかそんな子どものほうが多いだろうと思います。学校の勉強に愛想をつかしてしまった場合、小学3~4年生ごろまでに学業不振の兆候を見せ始めることもあると言われています。知的な素質がありつつ、学校の成績は散々だというギフテッドもいるわけです」
ギフテッドの子どもは、授業の半分から4分の3を「ただ待って過ごしている」という研究もある。現在、日本の公立の学校では、子どもを選抜し、個々の才能を伸ばすことに特化した英才教育は行われていない。今の制度を大きく変えずに教育現場でできる工夫というのはあるのだろうか。