●世界の是枝監督 『怪物』に感動の波

 カンヌ映画祭の常連巨匠の仲間入りをした是枝裕和監督の新作『怪物』は、コンペティション部門の上映作1本目として上映された。湖を望む諏訪市を背景に二人の少年の成長と心の変化を、日本社会の構図を投影しつつ描く。やさしさにあふれた坂元裕二氏による見事な脚本が脚本賞を獲得、是枝作品を最高のレベルへと押し上げた。

「ともすれば混沌とした現代社会を緻密に観察し、深く慈しみにみちた思いやりでつづる名作」とたたえたのは英国BBC、「ニュアンスがとにかく美しい」とは米ヴァニティー・フェアー誌、「坂本龍一の遺作となる哀愁を帯びた繊細なサウンド・トラックは宝」と表現したのは業界紙スクリーン・デイリー。世界中の媒体がポジティブに反応した。

 会見では多くの人が監督や主演の黒川想矢くんや柊木陽太くんにサインを求め、押し掛ける人も続出した。

●スコセッシとディカプリオの再度タッグ 長編大作の評価は?

 タレンティーノ作でブラッド・ピットと共演した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』以来4年ぶり、レオナルド・ディカプリオは『キラーズ・オブ・フラワー・ムーン(Killers of the Flower Moon)』を引っ提げカンヌ入りした。スコセッシ監督とロバート・デニーロが二人で一緒にカンヌに来るのは、1976年衝撃の『タクシー・ドライバー』がパルムドールを受賞した時以来と語り、意外な事実に一同びっくり。

『キーラーズ~』は、石油の発掘により栄えたオクラハマ州、先住民オーセージ族の所有する土地で起こった連続殺人事件に基づく同タイトルのノンフィクション本を映画化したスリラー。出所したばかりのレオナルド演じるアーネストが、信頼する叔父ウイリアム(デニーロ)のめぐらす犯罪の巣にひきずりこまれる中、モリーという先住民女性(リリー・グラッドストーン)と恋に落ちる。

 レオナルドは「オーセージ族の人々が僕らを信頼し、本作の制作が実現した事に感謝している。この悲劇を映画として語れたのは、忘れることのできない美しい瞬間だった。またオサージ族の仲間がカンヌに来てくれたことに熱く感謝する」と語った。

 3時間26分という長編大作、原住民に寄り添い詳細にまで気を配った映画つくりに称賛が集まった。オーセージ族のチーフ、スタンディング・ベアー氏もカンヌ入り、レッドカーペットや会見に参加した。

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