ある時、記者が自民党のベテラン議員と競馬の話をしていると、

「自民党で一番の競馬通は青木氏だ。秘書は週末になると競馬の新聞を買いに行っているよ。青木氏もよく場外馬券売り場に通っている」

 と教えてもらったことがあった。

 それからしばらくして、目深に帽子をかぶって、ジャンパーに身を包んだ青木氏を場外馬券売り場で見かけた。

 その後偶然、議員会館で青木氏とエレベーターに乗り合わせる機会があった。

 その場で名刺を渡し、

「私はスポーツ新聞のレース部で仕事をしていたことがあります。先生、場外によく通われていると聞いています」

 というと、

「珍しいね。面白いこというな。そんなこと言ったの君が初めて」

 それからは顔を覚えてもらったようで、何度か「今週の中山(競馬)は……」「先週のメインレースだがな」などと雑談をしてもらったことがあった。

「競馬のことならいつでも聞いて」

 と笑っていた。

 青木氏が引退後も何度か話す機会があった。

 平成研の将来については「(首相の)候補がいない」と渋い顔をして語っていた。

 茂木敏充幹事長のことを聞いてみると、

「うーん、まだまだかな。参議院をしっかりまとめないと。派閥の誰からも『総裁選に』と支援してもらえるように汗をかかないとな」

 との評だった。

 平成研のある国会議員は、

「平成研は、青木先生の影響力もあって参議院の結束は固い。だが、茂木幹事長はなにか、上から目線のようなものを感じて、青木先生や参議院ともすきま風が吹いていたように思う。青木先生がお亡くなりになり、平成研は総裁選で茂木幹事長でまとまれるのかな」

 とつぶやく。

 現在、派閥の人数は55人で第2派閥の茂木派。青木氏亡き後、どうなるのか。

「茂木態勢がますます強化されるでしょう。竹下氏と一心同体だった青木氏は『汗は自分でかく、手柄は人に』と支えてくれる人への配慮がすごくありました。そこを青木氏は茂木幹事長に言いたかったと思います」

 と話す。

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競馬も政治も同じで、よくわからないことが起こる