「英王室と親しい関係を築きチャンネルをつくるのは、皇室の大切な役目のひとつです。それだけに01年の昼食会でエリザベス女王が次の天皇となる皇太子さまに気を配り、親しく接していたことは、将来の皇室にとっても非常に有益なことだと感じました」
皇室にとって、英王室は特別な存在だ。
明治以降、日本の皇室がお手本にしてきたドイツ皇室は、1918(大正7)年に消滅。欧州王室のトップとして君臨する英王室が新たな手本になり、重要な存在となった。
皇族は若い時期に、英国を訪れ学ぶことが慣例化した。
21年には、19歳の皇太子だった昭和天皇が欧州に出発。英国では立憲君主制のあり方を学び、国王ジョージ5世を「第二の父」と慕った。
上皇さまも皇太子時代の53年、19歳のときにエリザベス女王の戴冠式に昭和天皇の名代として参列するため、欧米を訪問している。
そして戦後、多くの成人皇族が英国への留学を経験している。三笠宮家の故寛仁親王と長女の彬子さまがともにオックスフォード大学へ、秋篠宮さまはオックスフォード大学大学院、長女の眞子さんと次女の佳子さまも英国の大学で学んでいる。
■お忍びの同窓会
陛下には2001年の渡英中、英王室との交流を温め、多忙な現地の日程をこなしながらも心待ちにしていたお忍びの訪問先があった。約2年間過ごしたオックスフォード大学である。陛下はオックスフォード大学のマートン・カレッジで、寮生活を経験した。
かつての学び舎であるマートン・カレッジに到着した陛下を待っていたのは、懐かしい同窓生たちだった。彼らは、陛下の渡英にあわせて同窓会を企画したのだった。
「留学時代の陛下と親しかったメンバーが集まってくれたと聞きました。この同窓会のために、海外から駆けつけた仲間もいたそうです」(林さん)
同窓会の翌日、陛下は林さんとマートン・カレッジの周辺を散歩し、オックスフォードの街を一望できるサウス・パークまで足を延ばした。