子どもの頃から音楽とお笑いが大好きだったという鬼龍院翔さん。吉本興業のお笑い養成所である東京NSCへ通っていたこともあるが「お笑いの世界では成功できない」と感じ、芸人から方向転換しバンドを始めたという(撮影/今村拓馬)
子どもの頃から音楽とお笑いが大好きだったという鬼龍院翔さん。吉本興業のお笑い養成所である東京NSCへ通っていたこともあるが「お笑いの世界では成功できない」と感じ、芸人から方向転換しバンドを始めたという(撮影/今村拓馬)

「この仕事を長年やってきて思うのは、人は感情で動くということです。たとえば恋愛の曲だったら、直前のMCで“出会った瞬間のときめきを歌ってます”と説明しておけば、お客さんも理解してくれるし、もしかしたら帰りの電車で思い出してくれるかもしれない。音楽性よりも感情に訴えて、覚えてもらう。それがファンになってもらう第一歩だと思います」

■SNSはファンのスマホの中で生きるペット

 この本には、「ONE OK ROCK後釜選手権に参加するのはムリゲー。」「SNSの更新は、スマホの中で生きるペットの感覚。」とタイトルだけで「確かに!」と膝を打ちたくなる章が並ぶ。もちろん鬼龍院には、自身の経験に裏付けられた確かな根拠がある。

「“ONE OK ROCK後釜選手権”は、売れているバンドのあからさまな真似はしないほうがいいということ。たとえばお笑いの世界では、売れている芸人さんの芸を真似するなんてありえないですよね。ところがバンド界は、人気のバンドに寄せてしまう人たちがなぜか頻発するんですよ。『世界に一つだけの花』じゃないけど、ナンバーワンよりオンリーワンを目指したほうが絶対にいいと思います。SNSは、気の利いた面白いことを発信する必要はなくて。それよりも毎日“おはよう”とつぶやいて、フォロワーさんの生活の一部になったほうがいいんですよね。あと“仕事で絡んでいない異性をフォローしない”は鉄則です」

 “音楽の実力だけで成功するのは無理”と自分自身のレベルを受け入れ、顧客(リスナー)に受け入れてもらえることを考え、やれることは何でもやる。『超!簡単なステージ論』の根底にあるのは、きわめて現実的な考え方だ。その効力は鬼龍院自身がゴールデンボンバーで証明しているわけだが、彼はいかにしてバンド成功のための、ある意味“身もふたもない”方法論にたどり着いたのだろうか?

「まずは子どもの頃から母親に“相手の気持ちを考えて行動しなさい”と強く言われ続けたことでしょうね。その結果、人のことを気にしすぎる思春期を過ごしてきたんですけど、だからこそ今も“客席の人はどう思ってるんだろう?”と考えてしまうんじゃないかなと」

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期待を裏切りたくない