そんな状況で、「台湾有事だ!」という事態が生じたとき、参戦反対の声は、「台湾を見捨てるのか!」という正義を装う声にかき消され、それでも抵抗する人たちには、「非国民!」という言葉が投げかけられるかもしれない。その裏で多くの国民が密かに戦争を喜ぶことになる。
戦争を止める最後の砦。それは国民世論だ。しかし、その国民が、歯止めになるどころか、旗を振って自衛隊を送り出す。そんな光景が繰り広げられる未来が見える。
杞憂に過ぎないというかもしれないが、「武器輸出三原則」を廃止するとき、「輸出するのは救難飛行艇や軍用救急車など、人命救助任務に使う『装備』が中心だ」という触れ込みで、殺傷能力のある武器が輸出されることなど多くの人は想像さえしなかったはずだ。それが、巧みな世論誘導で、今や殺傷能力のある武器の輸出が議論され、国有武器工場まで実現する。
今回の法案にどの政党が賛成したのかを見てほしい。
自民、公明、維新、国民民主に加え、立憲民主まで賛成した。社民党も反対でなく退席。反対すれば、多くの国民の支持を失うと考える議員が多かったのではないか。
安倍政権のときからの経緯、そして、立民でさえ恐れる「軍拡を容認する国民世論」への変化。加えて、巨大軍事産業が地方を支える経済になれば日本がどうなるのか。
私の懸念は決して「杞憂」ではないと思うのだが、いかがだろうか。