
6月7日、「防衛産業強化法」が成立した。大きな反対もなく、気づかない人も多かっただろう。しかし、この法律は非常に危険な法律だ。
その内容を端的に言えば、日本の武器産業を世界中に輸出できるほど強大化し、大きな戦争にも十分対応して武器を供給できる産業にする法律である。そのために武器メーカーに助成金を出し、さらには、武器メーカーの事業継続が困難な場合に製造施設や設備を国が取得、保有までできることにする。つまり国有武器企業を作るのだ。
助成金を出すだけでなく、国有武器企業を作るという極端な措置に飛躍したことには驚いたのだが、政府はおそらく台湾有事は2027年ごろにも起きる可能性があると考えているのだろう。それまでに戦争できる武器の供給体制を整えるには、今がギリギリだ。つまり、政府は本気で戦争する気なのである。

直近の動きで懸念されることがある。「防衛装備移転三原則」の見直しだ。
元々日本は「武器輸出三原則」で武器輸出を禁止していた。しかし、安倍政権のときにこれを廃止。「防衛装備移転三原則」を定め武器輸出を解禁した。その際、この三原則の下に「運用指針」を定めたが、殺傷能力のある装備品の輸出は認めなかった。
輸出先も「安全保障面での協力関係がある国」に限定していたのだが、ウクライナに防弾チョッキやヘルメットを提供するために、指針を改定し、対象国に「国際法違反の侵略を受けているウクライナ」を加えた。指針さえ変えれば、武器輸出の対象国を自由に拡大できるのだ。
現在、自民党と公明党の間で、さらなる指針改定の協議が行われている。岸田政権としては、G7の議論を通じて日本だけが「殺傷能力のある武器」の提供をしていないことが浮き彫りになったことが追い風だ。ウクライナのためなら仕方ないという理屈で殺傷能力のある武器の提供を認める改定を行うだろう。
それと同時に、日本の武器の東南アジア諸国への輸出も進む。安全保障面での絆を強めるという名目だが、経済成長著しく急速に軍拡が進む同地域の武器需要を取り込み、日本の武器産業の拡大を狙う戦略である。