■阿川佐和子さんとの対話で得たこと
堀井さんはゲストのお話を聴くときに「この人が聞かれたいことはなんだろう」と常に考えているし、聞かれたくないことはあらかじめ勉強して、触れないようにしているそうだ。
「やっぱり視聴者の方々に喜んでいただくインタビューであるので、そこには“ええっ”という驚きだったり、良い言葉だったり、会話として色めき立つ何かがあった方が、見ている人が楽しいでしょう。その言葉を引き出すお手伝いをするというのが私の役割なんです」
この本の第6章には阿川佐和子さんとの対談が掲載されている。阿川さんといえば、週刊文春で連載『阿川佐和子のこの人に会いたい』の聴き手を務めているインタビューの名手だ。
対談の中に興味深い一文がある。
堀井 (笑)。私のインタビューは、基本的にはディレクターが作った台本がベースにあります。ひとりで自由にインタビューするってことはあんまりないんです。台本の質問に対する答えから、気になった部分を深掘りしたり、場をいい雰囲気にしたり……という役割で。
対する阿川さんはというと、
阿川 (中略)おっしゃるとおり、台本はいちいち無視していましたね。
と、話を聴くスタンスがずいぶん違っている。また、インタビューの対象の方に対する態度も結構な違いがある。堀井さんはインタビュー前には相手のことをしっかり調べるそうだ。
たとえば福岡出身の方へのインタビューだと、福岡のおまんじゅうの話になるかも……と、銘菓について調べたり。(中略)たいてい、話には出てこないんです。調べたものの9割は使わない。でもときどきそれで話が大きく弾むこともあるし、相手の話を受け止めたい、次につなげたいって思いが強すぎるんですね。
これに対して阿川さんは、
私は、資料を全部読むと、会ったような気になっちゃうんです。(中略)そうすると、確認するためのインタビューになっちゃって、面白くなくなる気がするんです。
この違いについて、堀井さんは次のように話す。
「私と明らかに違うなと思ったのは、阿川さんはお相手と一緒に会話を作っていくっていう感じなんですよね。なので、ご自分の話もものすごくされるし、一緒に響き合っているという会話の時間という感じです」
それに対して堀井さんは?
「私は聴くことはずっと仕事でやってきたので、ある種の決められている聞き方の型みたいなものがあって、仕事場ではそれをやってきたんです。私は割と本当に聴くポジションにいて、こちらの質問によって、言葉を動かして、全体の構成を作っていくというやり方です。
『聴く』ことに関する本がたくさん出ていますけど、これもその人その人によって全然違うんだなって改めて思いました。私は自分を主張するという感じではなくて、自分が居心地よく、あんまりカロリー使わずにハッピーにそこにいるという方法なんだなと思います」
TBSを辞めてから、定期的に朗読会を行っているという。
「800人ぐらい入る大きな所でも予定されていたり、地方を回って、図書館で小さな朗読会も開いています。子どもたちのためにお菓子をいっぱい持っていくんですよ。町の防災無線で呼びかけてもらって、そうすると町の人たちがやってきて……。お客さんが5人くらいの時もありました。いま2、3か月に1回ぐらいですかね。それがいま、最高に楽しいです」