2022年に古巣のTBSを退職した堀井美香アナウンサーが、2冊目の本を出版した。今年2月に『一旦、退社。~50歳からの独立日記』を出版し、退職する心構えからフリーランスとして独立した現在までの姿を、等身大で描いて話題になった。それから3カ月で出したのが『聴きポジのススメ 会話のプロが教える聴く技術』(徳間書店刊)だ。しゃべる専門家のアナウンサーが「聴く技術」? TBSを退職する決心をしてからこの本を書くまで、何を考え、なぜこの本を出したのか、語ってもらった。
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TBSという大企業の中で、やりたい仕事もある程度できた。子育ても一段落した。ふと気が付くと、年齢もちょうど区切りのいい50歳。
「幸いなことに、会社がアナウンスという外に持っていける技術を持たせてくれたというのが、ありがたかった。この技術があれば、日本中どこへ行っても仕事はできるかなと思っていました。在職中の収入を維持していこうとすると、結構なスキルを用意しなければならなかったでしょうけれど、幸い子供の教育費はもうかからないし、交通費を除けば1日500円ぐらいで生きていけるようになったので、もう何をやっても大丈夫かなと思いまして」
という具合に、TBSを結構あっさりとやめてしまったそうだ。
これまでのラジオやテレビの仕事とは異なる働き方に直面することになるわけだが、そのあたりの詳しい話は『一旦、退社。』を読んでいただくとして、その中でも一番印象的な仕事って何でしょう?
「ものを書くという仕事については、全然想像していませんでした」
え、2冊目ですよね。
「もともと物を書くのは苦手で、宿題の読書感想文とかも最後まで残していましたし、ここしばらくは、書いても50文字ぐらいでした」
それが、『一旦、退社。』と『聴きポジのススメ』ですか。
「自分でも驚きです。苦手なのに……」
『一旦、退社。』の話が来て書き始めた当初は、1つの段落を書くのに2日ぐらいかかっていたところが、書いているうちにだんだんスピードが上がって、後半になってくると同じ量を2、3時間で書けるようになっていったそうだ。友人でもあり、仕事仲間でもあるジェーン・スーさんに言わせれば「慣れよ」だそうだが。
「書くに従って、自分のリズムが分かってきた感じですね」
書くことにも慣れ、人気もあるのですから、このままエッセイストの道もあるんじゃないですか?
「皆さん、いまは物珍しさで来ていただいていますけど、書く仕事は本職ではないので。そちらに時間をとられると、本業の司会やアナウンスの仕事がおろそかになるので、そのあたりは気を付けようと思っています」