■しゃべりのプロが作った「聴く」ための本
2冊目の本『聴きポジのススメ 会話のプロが教える聴く技術』は、堀井さんの本職のひとつ、インタビュアーの仕事を、懇切丁寧に解きほぐして解説した一冊となっている。
「“聴く”ための本、たくさん出ていて、私もこれを書く前に図書館に行ったら、ブワーって並んでいて、こんなに出てるんだって驚きました。
いろんな本を見たんですけど、編集者の方、構成の方と三人で話し合いをしている中で、私が“聴く”ことについて書く意味はなんだろうと考えました。聴くことに関して、いろいろな立場でいろいろな方法があると思うんですが、私の場合は、人の話を聴くうえで、自分も相手の方も居心地よく居られるかということなんだと思います」
さて、ちょっとこの本の内容を紹介すると、第1章は「深く心地よい対話を生む『聴く』心構え」、これは基本ですね。第2章が「相手を思い、深い対話を生む『聴く』力」、相づちの仕方とか、下調べは「次」まで予想するなど、かなり実践的な内容です。
第3章「シチュエーション別『聴く』技術」になると、応用編。「『エレベーターホールまでは』周辺にある物に頼る」、「意見が違うときはアドバイスを求める」とか、そのまま実践で使えそうなアドバイスがたっぷり詰まっている。
この本が他と違うのが、第4章「よく『聴く』ために、声を育てる」、第5章「よく『聴く』ために、話し方を育てる」。
声や話し方を育てるんですか?
「聴く立場に立つと言っても、ただ聴いていればいいというわけではありません。効率的に『聴く』には、しゃべる時にはしっかりしゃべるということも重要です。ただ、多くのみなさんは自分が何をしゃべっているか、自分の耳ではキャッチしていないと思うんですよ。自分の言葉が相手に届いているか自分の耳でも感じとることが必要です。
自分の声を意識するようになると、自分の声が耳に入ってくるようになる。自分が話していることに意識がいくし、会話の流れの中で、ここに気を付けて話すんだという気持ちが生まれてくると、会話の輪郭がしっかりしてくるんです」
声を鍛えると、相手や話の内容によって話し方を変えることができるようになるという。それによって、相手がより話しやすくなるという効果もあるという。しかし、トレーニングをするには自分の声をしっかり聴かなければいけないとか。
自分の声を聴くって気持ち悪いですよね。
「それは慣れです。気持ち悪いと思ってしまうと、ずっと聞いていることはできないですよね。私も初めて自分の声を聴いたとき、ひえって思いました。こんなに甘ったるい声なんだと思ってショックを受けました。自分の声を受け入れる。『あ、私ってこういう声なんだ』っていうことをちゃんとわかる、自覚することが重要です」
こうした訓練で声は確実に変わり、より人の言葉を引き出せるようになるという。