連邦議会議事堂に集まるトランプ大統領(当時)の支持者たち=2021年1月6日
連邦議会議事堂に集まるトランプ大統領(当時)の支持者たち=2021年1月6日

 さらに、共和党を中心に保守派は「銃を保持する権利」がアメリカ合衆国憲法で保障されており、その権利は絶対に手放したくない。トランプ前大統領が政治家として問題があっても、銃を保持する権利を守るという立場を取っただけで、彼に投票する有権者は無数にいる。

 銃器による被害は、直接事件によるものだけにとどまらない。2018年、フロリダ州のマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で起きた銃乱射事件では、生徒や教職員17人が命を落とした。その後、事件のトラウマで2人が自殺したことも米メディアは報じている。

 事件の生存者で生徒だったデビッド・ホッグ氏(23)はその後、ハーバード大学に進学し、銃規制を訴える活動家となった。事件直後に高校生のグループを作り、ワシントンで大規模な「マーチ・フォー・アワ・ライブズ(生きるための行進)」を実現した一人だ。

 彼は事件から5年後の今年6月、米公共ラジオ局NPRの取材に応じ、こう語った。

「銃のこと、どうやって入手するかだけでなく、(背景となる)メンタルヘルスについて語らなくてはならない」

「銃を手に取ってどんな心理になるのか、貧困がいかに強く銃犯罪に結びつくのかについても話し合っていくべきだ」

 何かが間違っていると声を上げるだけではなく、何が解決に結びつくのかを訴えていかなくてはならないという。それが、活動家として学んだ「教訓」だと。

■喜びや希望を

 2022年には、テキサス州で児童19人、教員2人が犠牲となるダグラス高校を超える悲劇の銃乱射事件が起きた。ホッグ氏と友人は現地に向かい、生存者に会って打ちひしがれた後、砂漠に星を見に行ったという。

「自分たちを常に銃の危険にさらし、その後のトラウマの中だけに生き続けることはできない。運動の中でも、仲間を作っていくこともできる。悲しみや失望に包まれるだけでは生きられず、喜びや希望もある運動にしていかなければならない」

 と痛感したという。

 今年4月に訪れた近鉄大和西大寺駅北口に戻る。駅ナカにあるウイスキーバーのバーテンダー、岡本智章さん(35)は、こう語った。

「いまだに(安倍元首相殺害事件が)毎日通勤する場所で起きたとは、信じられない。その後もお花を供える人が長蛇の列だった。それも異様な光景だった。でも、のんびりしている、何もない場所だからこそ、無防備な点もあった。それを教訓として前向きに考えて、将来は凶悪な犯罪が起きない世の中をみんなで作っていきたいですね」

(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)

AERA 2023年7月10日号