ビッグバンは138億年前に発生したことが判明している。ビッグバン直後にはまだ星はなく、宇宙は暗黒な空間でしかなかった。やがて宇宙空間を漂う水素やヘリウムがガスとなって集積し、ビッグバン発生後、1億年から2億5000万年が経過したころ、やっと「ファーストスター」が誕生し、はじめて宇宙に光をもたらした。

 136億年の昔、136億光年の遠方で発せられたファーストスターの光は、136億年かけて地球に向けて飛び続け、いまやっと地球に到達している。その極めて微弱な光をJWSTはとらえようとしている。

 ただし、ファーストスターの光は、私たちが目視できる可視光線では捕捉できず、赤外線でしか観ることができない。なぜか。これを理解するには先に、「電磁波」の理解が必要になる。ちなみに、ハッブルは主に可視光線を観測する宇宙望遠鏡だが、JWSTは「赤外線宇宙望遠鏡」である。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の反射鏡の単体。これが18枚組み合って主鏡が構成されている (C)NASA / Goddard / Drew Noel
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の反射鏡の単体。これが18枚組み合って主鏡が構成されている (C)NASA / Goddard / Drew Noel

  電磁波と聞いてもピンとこないかもしれないが、その仲間は私たちになじみ深いものばかりだ。電磁波とは、医療機器にも使用される「ガンマ線」や「X線」、私たちの肌にダメージを与える「紫外線」、ヒトが目で見ることができる「可視光線」、テレビのリモコンにも使用される「赤外線」、テレビやラジオに使用される「電波」などに大別されること、それぞれに波長の長さが異なることは、5月14日に配信した記事「人間の身体は『星の爆発』から生まれた? 宇宙望遠鏡が教えてくれた『私たちはどこから来たのか』」で説明した。少々難しくいえば、電磁波とは「電界と磁界が組み合わさったもの」と説明できる。金属に電気を流すと磁石になるが、それと同じ原理だと思うとイメージしやすいだろう。また、「電磁波は空間を進むことができる」という特徴も持つ。

 さて、ファーストスターが136億年前に発した光は、136億年の旅を経て、やっといま我々のもとへ届いているが、じつはその間、宇宙はずっと膨張し続けている。一定の波長を持つ可視光線が、膨張し続ける空間を136億年にわたって飛び続けると、どうなるのか。実は可視光線の光は、宇宙空間とともにそれ自体の波長も引き伸ばされ、現在の地球に届くころには波長の長い赤外線に変化する。この現象を「赤方偏移」という。

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