世界を巻き込み、いまなお続くウクライナ戦争。最大の支援国としてウクライナを支えるNATOとアメリカはこれからどうなるのか。フランスの歴史人口学者であるエマニュエル・トッド氏とジャーナリストの池上彰氏との対談をまとめた『問題はロシアより、むしろアメリカだ 第三次世界大戦に突入した世界』(朝日新書)より一部を抜粋、再編集し、紹介する。
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■NATOの兵器供与が戦争を長引かせているのか
池上彰 とくにこれからのウクライナ戦争がどうなるのかというときに、ウクライナに対して、アメリカも含めてNATOが兵器供与をしていますよね。
これについては、「それをやっているから戦争が長引いているんだ」という考え方がある一方で、「援助しなければ、あっという間にウクライナが負けてしまって、ウクライナはロシアの植民地のような従属国になってしまうんじゃないか」という意見もある。それを考えたら、NATOが軍事的に支援をするのは、仕方のないことではないかと、こういう考え方もあります。これについては、どうお考えになっていますか。
エマニュエル・トッド そうですね、その点に関しても分析をしようと、いろいろ試みているんです。私はこれをすべきだとか、すべきではないといったようなことを言う立場ではないと思うんですが、アメリカがなぜウクライナで戦争をこういう形で展開しているのかということを考えると、まず国際政治におけるアメリカの態度というものを一度振り返ってみる必要があると思うんですね。
まず、アメリカの外交政策の特徴の一つとして、「同盟国を見放す」という点があります。
たとえばですけれども、もし台湾で対中国の戦争があったとします。その場合、アメリカが介入してきたとしても、もし西側が負けそうだとなったら、おそらく日本と台湾を、アメリカは簡単に見放すだろうと私は見ているわけです。
そういった意味から、ウクライナでも同じようなことが起こり得るだろうと、私は思っています。