「クライアントさんを見ていると、夫が妻に依存しているケースが少なくない。それでは妻が窮屈。先手を打ち、『ひとり遊びを覚えさせる』くらいの気持ちで接した方がいい」
『親の終活 夫婦の老活』(朝日新書)の著書があるファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんも、将来の「おひとりさま」を見据え、人生設計をしていくことを提唱する。
「長くシングルの人は1人で生きていく術を身につけている。それに比べ、配偶者や子どもがいる人は『おひとりさま』に弱い。夫婦ともに元気な今、将来の『おひとりさま』に向けての準備を始めるべきです」
何をおいても必要なのは、お金だ。支出を把握し、カットできるところはカットする。支出は2種類ある。固定費(住宅ローン、固定資産税、家賃、通信費、各種保険料など)と変動費(食費、水道光熱費など)だ。
「食費や水道光熱費の節約はやり過ぎると体調を崩しかねません。カットするなら固定費。なかでも保険は、証書をすべて並べて精査し、今後の人生で必要なのか、取捨選択を」
■住み替えも検討する
余剰資金があるなら、投資するのも手だ。
「投資信託を対象にした非課税制度『つみたてNISA』はいかがでしょう。投資の利益には20%の税金がかかりますが、つみたてNISAは税金がかかりません。制度改正で24年からは非課税期間は無制限、つみたて投資枠で年間120万円まで投資できます」
「住み替え」も検討項目に入れたい。子どもの独立後、広い家に夫婦2人で過ごすのは防犯上問題がある。「おひとりさま」になった時、孤独感が増すかもしれない。井戸さん自身、36年間住み慣れた一戸建てから賃貸マンションに転居した。一戸建てでは物が増え夫婦に何かあったとき息子に迷惑がかかると思ったこと、その息子が結婚で家を出たことなどが契機となった。
「断捨離ができて身軽になり、実際に転居を経験したことで、自分にとっての適切な住居を改めて考えられました」
その後さらに引っ越しをし、現在は築3年の分譲マンションに暮らしている。利便性が良く、静かな環境で、自分のスペースがある。気密性が高く、一戸建ての時と比べて光熱費が大幅に減った。(ライター・羽根田真智)
※AERA 2023年6月5日号より抜粋