この30年間でMARCH(明治・青山学院・立教・中央・法政)への大学合格者数を伸ばしている高校がある。どんな教育方針なのだろうか。埼玉の大宮開成と横浜市の山手学院を取材した。AERA 2023年6月5日号の記事を紹介する。
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駿台予備学校によると、5月の「駿台全国模試(ハイレベル)」では理系3教科型の受験者数がこの30年間で約2万人から約2万7千人に増加。それに対し、文系3教科型は約2万3千人から約1万1千人に減少した。まさに文理逆転の構図である。
駿台入試情報室部長の城田高士さんは、この30年間で「伸びている学校」の共通点を指摘する。
「やらされるのではなく、自分から進んで学ぶ自主性のある生徒さんが多い印象です。『入試ってイヤだよね』ではなく、『入試があるから頑張れる』というロジックを持っている生徒さんが多いように思います」
生徒の自主性を育てるには、周りの教職員がどうサポートするのかも重要だ。埼玉の大宮開成もこの30年で実績を伸ばし、立教、中央、法政の3大学で1位に。今やMARCHの合格者数トップを誇る進学校になった。
同校は1959年に女子校として設立。大学進学を希望する生徒はほとんどいなかったが、96年に打ち出した「学校大改革」で大きく変わる。渡邉涼也進路指導部長は言う。
「進学にも力を入れようと、97年から共学化。特進コースを設置しました。ただ、大学受験のノウハウはなく、ほとんどゼロからのスタートでした。若手教員は予備校講師の授業を見学して、受験指導というものを学びながらやっていました」
他校の受験生に追いつくために、学びの環境を整えた。すると、初年度から早慶に受かった生徒が1人。結果が出た。
人の発想力は2のn乗
現在、予備校講師による授業はなくなった。年月が経つにつれ教師の授業も洗練されていったからだという。
「受験戦略も担任が主軸となって組み立てるので、進路指導部長の私は資料を渡すだけ。もともと進学校ではなかったこともあり、先生が自由にやれる余白があるのも大きいです」
渡邉さんはそう言い、今では「教員全員が進路指導部のよう」と、自信にあふれる。