今回の“全世界株式対決”で改めて話題になったのが、指数利用料(インデックスフィー)の存在だ。インデックス型投資信託の場合、S&P500ならS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社に、全世界株式の指数(MSCI ACWI)ならMSCI社に“インデックスを使わせていただくお金”を払わねばならない。トレイサーズは指数利用料を信託報酬に含めていない。eMAXIS Slimは信託報酬に含めている。そもそも指数利用料はどれくらいかかるのだろうか。
「指数算出会社との個別契約になるので正確な数字は開示できません。一般的には純資産総額に応じて支払うケースが多いです」(野尻さん)
正確な数字の回答は控えたが、三菱UFJ国際はインデックス型のETFで指数利用料を開示している。eMAXIS Slim全世界株式と中身が同じETFが「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信」で、0.055%上限。この数値が参考にはなる。
信託報酬とは別でかかるその他費用は“隠れコスト”とも呼ばれ、各投資信託の決算時に運用報告書に記される。内訳は売買手数料、有価証券取引税、保管費用、監査費用、目論見書などの作成・印刷費用等。いくらかかるか予想しづらいので「1年でこれだけかかりました」という“事後報告”形式だ。
■目論見書費用の外出し
日本の投資信託には「どこまでを信託報酬に含め、どこからその他経費に含めるか」という明確な基準がない。各社の裁量に任されているのがそもそもの問題点ではないか。
たとえば「目論見書などの印刷・作成費用」に関して、人気のSBI・Vシリーズや楽天インデックスシリーズは信託報酬から“外出し”。三菱UFJ国際は信託報酬に含めている。
22年4月、投資信託協会は目論見書に「その他費用も含めた総経費率を記載するよう」細則を改正した。今後は目論見書に前期の総経費率も信託報酬と併せて掲載されるようになる。eMAXIS Slimは「7月作成の目論見書から総経費率も掲載します」(野尻さん)。
目論見書や運用報告書を見るのもいいが、ごまかしが利かないのは「トータルリターン」の項目だ。信託報酬だけでなく、一定期間のトータルリターンもチェックすることをすすめる。
(経済ジャーナリスト・向井翔太、編集部・中島晶子)
※AERA 2023年6月5日号